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●人工衛星 じんこうえいせい

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 月と同じように,地球のまわりを回りつづける人工の天体。通常は,それぞれのミッションを以て打ち上げられたものを人工衛星と称し,地球を回りつづけていても,ロケットの燃え殻などは衛星とは称せず,宇宙浮遊物として扱う。また,人工衛星・人工惑星などを総称して宇宙機と呼ぶことは多い。

【人工衛星の歴史】人工衛星の可能性を最初に予言したのは,イギリスのニュートンである。1661年に万有引力の法則を発見した彼は,地球上の高所から水平に打ち出された物体はやがて地上に落ちる。しかし,非常な高速体で打ち出された場合は,落ちずに地球をまわる,と図を描いて説明した。一方,人工衛星を着想した最初のSF作家はアメリカのヘイルで,彼は『レンガの月』と題する作品のなかで,レンガ製の巨大な人工衛星を打ち上げて航海の目標とする話を書いた。その後,ロシアのチオルコフスキー・アメリカのゴダード・ハンガリー生まれのオーベルトらが,ロケットによる人工衛星打ち上げの可能性を理論計算によって示した。ついで,第二次世界大戦末期にドイツの報復兵器V2ロケットが開発されたが,これに携わった技術者たちが戦後米ソに移りとくにアメリカにおいて人工衛星や宇宙船の打ち上げに重要な役割を演じた。

 ところで後述のように,人工衛星を赤道上空3万6,000kmの東回りの軌道に打ち上げると,衛星は地球の回転と同期して,地上からみるとあたかも天空の1点に静止しているかのようにみえる。これが静止衛星であるが,これを最初に着想したのはイギリスのSF作家クラークで,スプートニクの出現に先立つ数年以前の1945年のことである。このクラークといい,先のヘイルといい,SF作家の非凡な着想に敬服させられる。

【人工衛星の軌道と種類】前述のように,地球の高所から水平に打ち出された物体はやがて地上に落下する。このとき,もし物体が地面をつき抜けて,地球内部まで何の抵抗もなく落下をつづけるものと仮定し,また地球の全質量は地球中心に集中しているものと仮定すると,万有引力の法則にもとづく2体運動の方程式に従って,物体は地球中心を焦点の一つとする長楕円2次曲線を描いて動く。すなわち物体は地球中心のむこう側を回って上昇に転じ,地面を貫いて元の出発点に戻り,以後も同様の運動をつづける。次に,物体の打ち出し速度を増すと,それに応じて楕円曲線の形がふくらみ,ついに物体は地球面と交わることなく,周回しつづける。こうして人工衛星が誕生する。さらに速度を増すと,2次曲線はさらにふくらみを増し,しだいに対極点(遠地点)が地球を遠ざかって,ついには無限遠となる。すなわち,物体は放物線を描いて飛び去り,再び地球に戻ることがない。これが地球引力圏の脱出である。地上すれすれの人工衛星可能速度を第1宇宙速度(秒速7.91km),地球引力圏脱出速度を第2宇宙速度(秒速11.08km),また太陽引力圏脱出速度を第3宇宙速度(秒速16.65km)という。さて,人工衛星の軌道は,[1]軌道長半経,[2]軌道離心率,[3]軌道傾斜角,[4]昇交点赤経,[5]近地点引数,[6]平均近点離角,の6要素によって定まる。これまでに打ち上げられた人工衛星の軌道のなかでは,東方向に回る中高度円軌道が最も多数であるが,とくに重要で興味深いのは,静止軌道極軌道である。静止軌道は前述のように,赤道上空3万6,000kmを東方向に回る軌道で,この軌道上の衛星は周期1日,地球の自転と同期するので,この衛星を赤道全周上に4〜5個(理論上は3個でもよい)配置すれば,全世界ネットワークを形成することができる。このことから,とくに気象観測,通信衝星・放送衛星などに利用されることが多い。一方,極軌道は下高度800〜1,000kmで,赤道に対する傾斜角が90度よりもやや大きく西回りに地球をめぐる。この軌道上の衛星は太陽に同期し,たとえば地球上のある緯度を毎日同じ時刻に横切り,かつ,十数日ごとに元とまったく同じ軌道に戻る。これに加えて,軌道傾斜角がほぼ90度であることから,衛星は南北両極の上空に近いところを通過し,地球のほとんど全表面を見下ろす形で飛行する。以上の理由から,極軌道は気象観測や地球資源観測,軍用などに重用される。上述のような軌道の種類によって衛星を分類することもできるが,通常は,衛星の用途・目的などによって類別することが多く,科学衛星・技術試験衛星・気象衛星・通信衛星・放送衛星・地球観測衛星・測地衛星・航行衛星などのほか,軍用衛星などに類別される。