●人口 じんこう
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人間の集団を意味する。英語はpeople(住民)を動詞化したものを名詞として用いたことばで「一定地域に居住する住民の総数」のことである。一人一人の人間は生物的存在であるが,ある一定の社会のなかで生活している存在である。したがって,人口は社会活動の担当者としての人間の集団である。人口現象は,経済的・社会的・文化的諸条件によって支配され,人口の大きさが出生と死亡という再生産運動によって絶えず変動し,構造が変わることである。人口変動の状態を人口動態と呼び,人口の多少を決定する要因(出生・死亡・流入・流出)と,属性の変化によって構造を変動させる要因(結婚・離婚,病気・傷害の発生と治療,職業や所属産業の転換など)とを人口動態の要因という。これに対して,変動する人口をある瞬間で静止的にとらえたものを人口静態と呼んでいる。わが国で1920年(大正9)から5年ごとに実施されている国勢調査(センサス)は人口静態統計を示しているのである。【人口分布】世界の総人口48億(1984)は,寒帯や高山・砂漠のごく一部のアネクメーネ(非居住地域)を除いて,世界に広く分布しているが,その分布が不均等である。総人口の80%が陸地面積の10分の1以下の地域に居住している。世界の人口の密集地域は,世界人口の半分が住むアジア東南部の米作地域と西ヨーロッパ・北アメリカ北東部の商工業地域で,1平方kmあたりの人口密度が100〜300人に及ぶ。これに対して,自然環境が厳しく生産力の低い高緯度地域や乾燥地域・アマゾン川流域の熱帯雨林地域などは,人口密度一人未満の希薄地域である。
【人口増加】ある地域の人口増減は,出生と死亡との差である自然的増減と流入と流出の差である社会的増減によってもたらされる。人口の自然的増減は,人間集団の経済的・社会的・文化的な生活条件によって左右される。欧米諸国や日本などの先進工業国では,産業革命前には多産多死型を示していたが,工業化の過程で,まず死亡率の低下に伴う多産少死型に移行し,さらに,所得水準の向上と保健・医療の普及した現在では少産少死型へと人口転換をしている。自然増加率も年0.8%程度に低下している。これに対して,日本を除くアジア・アフリカ・ラテンアメリカの発展途上地域では,かつて多産多死型から,第二次世界大戦後,独立後の経済的自立をめざした医療や環境衛生の改善などによって,死亡率が急減したのに,出生率が高い水準にあるために多産少死型の段階にとどまっていることが,“人口爆発”を招いた。発展途上地域の自然増加率は,中国などの東アジア諸国やインドの人口抑制政策にもかかわらず,年率2.2%の高水準にある。この世界人口の4分の3を占める発展途上地域の爆発的な人口増加が,世界人口の急増に大きく影響している。
【人口移動】現在の世界の人口分布は,過去の社会的増減である人口移動の結果を反映している。人口移動は,移動地域によって国際移動と国内移動に分けられる。また,移動要因としては,経済的なものが主であるが,宗教的要因により1620年にメイフラワー号でイギリスからニューイングランドに移住した清教徒,政治的要因による第二次世界大戦後の国境の変更による敗戦国のドイツ人や日本人の移動の例もある。国際移動では,16世紀〜20世紀初期にかけてのヨーロッパ人の南北アメリカ・オーストラリアなどのいわゆる新大陸への移住,植民地開発の労働力としての奴隷貿易によるアフリカ黒人のアメリカ大陸への移住,中国人(華僑)やインド人の東南アジアなどへの移住が目立っているが,日本人もアメリカ合衆国やブラジルに移住した。近年の国際移動は,国内・国境紛争に伴う難民の移動が中心となっている。また,国内移動では,開発地域から低開発地域への移住の例として,アメリカ合衆国の東部から西部・南部ヘ,ソ連のヨーロッパ=ロシアからシベリアへの流れが知られているが,世界的には,農村から都市に人口が集中する向都離村現象が,近年は発展途上国も含めて顕著になってきている。さらに,一時的移動である出稼ぎも,わが国における東北地方から京浜工業地帯の都市へむかう国内移動のほか,南ヨーロッパ諸国から西ドイツの工場やフランスの農村へ出稼ぎする国際的移勤もみられる。
【人口構造】人口の地域的特性を示す人口構造としては,男女別・年齢別人口構成と産業別人口構成が知られている。年齢別人口構成からは,人口の自然的増減と社会的増減のほか,人口ピラミッドから戦争や流行病の影響なども読みとることができる。人口ピラミッドを分類すると,[1]富士山(ピラミッド)型,[2]つりがね型,[3]つぼ(紡錘)型,[4]星型,[5]ひょうたん型に分けられる。[1]型は出生率・人口増加型,[2]型は出生率が低下してきた人口停滞型,[3]型は人口減少型で,一般に発展途上国では[1]型であるが,先進工業国では[2]型,さらに[3]型へと移行する。また,[4]型は若い生産年齢人口の流入する都市型,[5]型は人口が流出し,老年人口の多い農村型である。産業別人口構成では,就業者の人口割合から,発展途上国では第1次産業(農林・水産業)が70%前後を占める国が多く,第2次産業(鉱・工業)・第3次産業(商業・運輸・通信・サービス・公務・自由業など)人口は少ない。先進工業国になると,第2次産業・第3次産業の占める割合が高く,第1次産業人口は少ない。わが国の産業別就業者数割合(1983)は,第1次産業9.3%,第2次産業34.1%,第3次産業56.4%である。
【人口理論】人口理論では,マルサス(1766〜1836)の『人口の原理』とマルクス Karl H. Marx(1818〜83)の人口理論が知られれている。マルサスは,人口が幾何級数的に増加するのに対して,人間が生存するために必要な食糧生産は算術級数的にしか増加しない。ここに人口と食糧の不均衡から絶対的過剰人口としての貧困・悪徳が生ずるとして,人口増加を抑制するために晩婚による道徳的抑制を説いた。マルクスは『資本論』のなかで,資本主義生産のもとでは,利潤追求のための機械化の進展が,労働者を失業者に追いやり,相対的過剰人口が生み出される。失業労働者は不景気のときは失業させられるが,景気のよいときには動員される産業予備軍である。したがって,人口問題は雇用の問題であると説いた。
【世界人口の推移と人口問題】第二次世界大戦後,世界人口は1950年の25億から現在(1984)の48億へと,30年あまりのあいだに2倍近く増加した。このうち先進地域の人口は50%程度の増加にすぎなかったが,発展途上地域の人口は2倍以上に増大した。国際連合の将来推計によると,今世紀末までに61億,2025年に82億に達するものとみられている。先進資本主義国では,出生率の減退に伴う老人人口の増加から,高齢化社会における社会福祉対策が問題となっている。これに対して,発展途上国では,子供が労働力として期待されることも高出生率の一因となっている。雇用や教育保障が人口抑制政策とともに課題である。
〔参考文献〕館稔他『人口問題の知識』1979,日本経済新聞社
人口問題審議会編『日本の人口・日本の社会』1984,東洋経済新報社
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