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●慎機論 しんきろん

アジア 日本 AD 

 渡辺崋山の著書,1巻。1839年(天保10)正月に成立。1夜で書き上げられたもの。その文章は,まったくのメモ風のもので,反古類の一つにすぎず,草稿類であった。そのなかで崋山は,〈わが国の体制が人道にそむくという理由で,わが国との貿易を望んでいるイギリス人に,侵略される口実をつくることになる〉と指摘し,警戒の意を示している。〈しかし日本だけが,西洋人と通交を結ばないで孤立していることは大変おそろしいことで,いろいろ心配せざるを得ない事態である。それゆえ貪婪の名目を除くため開国論を説く。高明空虚の学を排斥し,井蛙の見を打開し,英達の君の出現を要請し,広い視野に立たねばならない〉と説いている。崋山は大所に立脚しながらも,高野長英が「無二念打払令」を批判したのに対し,西洋事情を知ることの急務を述べる域を脱し切れていない。それにもかかわらず本書は,蛮社の獄に連座する原因となり,処土横議のとがをもって処罰の対象となった。