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●史料学 しりょうがく

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 史料についての学問で,史料のもつそれ自体の属性,その固有性を史料の伝来・形質・内容について研究する学問である。これに歴史学の分野でもそれ自体相対的に自立した研究分野である。

 史料の形態面からみると,[1]文字による文献史料−−文書・記録・編著,[2]遺物史料,[3]風俗・習慣・伝説・民話などのような伝承民俗資料,とに分けることができる。その結果,[1]古文書学・古記録学・文献学・書誌学,[2]考古学,[3]民俗学といった学問が発展してきたのである。 戦後日本史学は[2][3]の発展にくらべて,[1]の立ち遅れがめだっている。とくに近世・近代の古文書学の発展は著しく立ち遅れている。そのことは,古代・中世の古文書学の延長線上に,依然として近世・近代の古文書学の分類も存在している。そのなかで一書ゆるしがたいのは,文献史学をもって史料学の根幹と考え,それがそのまま歴史学であるとの考えが固定観念として常識のように通用していることである。

 そして歴史学は初めから考古学や民俗学を扱わぬもの,さらに補助学としても使用しないものと考えているものが多い。そのくせ古文書学とも書誌学との連携も不十分であるとすると,歴史学は各史料学を従属させながらそれをくみ上げぬ学問となっている。

 史料学は18世紀になってから発展した。それは文献史料以外が重要な意味をもつことが明らかになったからである。そこで歴史学とは何であるかが考えられている。ゆえに歴史学を志すものは,史料学のもつ意味をもっと考えねばならない。その点で史料学そのものの自立が必要ではないか。自己の専門としての責任範囲を明確にして,正しい史料批判の上にたつ史料を提示することが学問の発展に不可欠である。そのためには史料の残存伝来形態についての地域的特殊性と,民族的特殊性の考証をしなければならない。ところがいまだその面では立ち遅れている。とくに世界に誇る莫大な地方史料を含む近世・近代文書史料は,社会変動と物資不足に耐えて今日に伝来しているのである。これをいち早く整理・分類することは,近世古文書学の確立と,近世史料学の発展のためにも不可欠な基礎作業である。

 しかしその反面,文書そのものの性格分析などの研究は必ずしも十分でない。五人組帳・宗門人別帳・検地帳のような帳面類の史料学的整理等はほとんどされていない。

 近世古文書学の整理も,古代・近世によりそいすぎ一つ一つの文書様式の研究まで立ち入っていない。このことは近世古文書の整理の指標となった様式分類があまりにも簡単すぎていることによる。たとえば範囲類のなかには[1]土地関係書類,[2]戸籍関係書類,[3]村政関係書類の3種類しかあげられていない。一村文書の分類も古代・中世によりそい,[1]下達文書,[2]上申文書,[3]相互文書・自治文書としている。これでは近世地方史料学が成立しているといえない。

 いかに古文書学が文書真偽決定の学たる性格が強いとしても,史料批判が近代史学の最前提であるとすれば,文書史の研究もなく文書の機能の認識もなくして,研究が進むかどうか一考も二考もされなくてはならない。人間意志伝達の様式である古文書の形式は,それ自体に反映しているものとすれば,もっと古文書の様式のなかで私文書さらに民衆の方から出た訴願文書の様式研究につとめる努力が必要である。それを雑文書などといって一括して除外することは,史料学として未熟であることを示している。端書なども大切にすること,風土記形式のものなどを重視する視点がもっと打出されてよいのだが,まだまだ支配中心の文書学を打破できない。書式の成立の時代考証なども,もっと史料学として処理したらはっきりさせることができると考える。そのために史料学を古文書学と別に成立させる努力は認められるべきである。その一つに木簡字や金石文字も位置づけられるべきものと考える。