●象徴天皇 しょうちょうてんのう
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日本国憲法により主権在民が宣言された(前文1節1条)結果,天皇の地位に重大な変化が生じた。天皇はもはや元首でもなければ,統治権の総攬者でもない。憲法第2条は,〈天皇は,日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって,この地位は,主権の存する日本国民の総意に基く〉と定めている。この象徴(シンボル)という地位は法的用語としてはあいまいで不明確であり,そのため文学的表現であると評されてきた。ヨーロッパの立憲君主は,今日でも憲法上依然として国の元首・統治権の総債者であるが,それはあくまでも建前にすぎず,実際には,早くから〈君臨すれども統治せず〉の政治的慣行が確立し,君主は政治の実際にはかかわっていない。もともと,君主の地位には,憲法に明示されていなくとも国の象徴という特性が付随しているのであるが,主権在民を唱ったわが国の憲法のもとで,天皇制の存続を認めるためには象徴という位置づけをせざるを得なかったのであろう。このような天皇の地位というものは,法理的にはあいまいであるが,わが国固有の歴史・文化,さらには,国民を主権者としながらも,なお天皇制の存続を求める国民感情によってしか説明しえない。なお,皇位は世襲とされ(憲法第1条),皇位の継承も〈皇統に属する男系の男子〉(皇室典範1条)に限られている。世襲的な貴族制の廃止や性別による差別を禁じた憲法第14条の趣旨には反するが,これは憲法自身の定めた例外であるから,違憲ではない。ついで,天皇の職務であるが,憲法は,天皇は政治上の権限を一切有せず(第4条),一定の国事行為(第6条・第7条)を「内閣の助言と承認」によって行うと定めている(第3条・第7条)。最後に,その地位との関係で,天皇の法的責任が問題となる。天皇が刑事責任を問われないという点ではほとんど争いがないが,民事責任については見解が分かれている。