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●ジョイス

ヨーロッパ アイルランド AD1882 

 1882〜1941 アイルランドのダブリン出身の小説家・詩人。ヴァージニア=ウルフとともにイギリスの〈ヌーヴォ=ロマン〉の先駆者にあたり,ヨーロッパ的文学空間の知的コスモポリタンの立場に立つ。若くして故国脱出意識が強く,文明の麻痺の中心としての郷里ダブリンを厭い,ユニヴァーシティ=カレッジ卒業後,パリに出て医学を志したが,劇作家シングとの出会いで文学に転じ,1905年からイタリアのトリエステで語学教師をしながら創作を始めた。1914年スイスに移ってから死の年まで,主としてチューリッヒとパリで作家活動にうちこんだ。18もの古典語・近代語に通暁し,人間大全的な夢言語を追求したが,晩年はほとんど失明状態だった。代表作は,家庭と教会への反逆と,沈黙と狡智を誇る自恃精神の果てに〈エピファニー〉(永遠的時間の顕現)に開眼する自伝的な成長小説『若き芸術家の肖像』(1916)と,ホメロスの『オデュッセイア』とユングの神話原型を下敷きに,レオポルド=ブルーム夫妻と青年スティーヴン=ディーダラスの一日の意識現象を,まるで万華鏡か言語のイメージ劇場のように記録した『ユリシーズ』(1922)がある。ほかに,ダブリン人の暗い愛と性と死を描いた初期のリアリズム=スケッチ『ダブリンの人々』(1914)・『全詩集』(1936),アイルランド神話の巨人フィン=マクールを原型に,人間の堕落と復活を音声・意味・視覚の一時三元の連想の流れとして綴った言語叙事詩『フィネガンズ=ウェイク』(1939)がある。ジョイスは,いわゆる“意識の流れ”“内的独白”の手法の創始者でもある。とくに『ユリシーズ』は,プルーストの『失われた時を求めて』やトマス=マンの『魔の山』と並ぶ画期的な言語-時間小説で,アメリカのフォークナードス=パソス,フランスのミシェル=ビュトール・クロード=モーリヤックなどの新しい小説に大きな影響を与えた。