●重要無形民俗文化財 じゅうようむけいみんぞくぶんかざい
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無形の民俗文化財のうち,とくに重要なものとして国が指定したものをいう。この指定制度は,1975年(昭和50)の文化財保護法の改正によって実現した。1976年(昭和51)に第1回30件が指定されてから,1985年(昭和60)1月までに125件が指定された。文化財保護法では,無形の民俗文化財を〈衣食住,生業,信仰,年中行事等に関する風俗慣習,民俗芸能で我が国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないもの〉と規定する。それは,従来,無形の民俗資料とされてきたものに相当し,日本民俗学が学問の対象としてきた民間伝承と解してもよい。無形の民俗文化財の指定制度の背景には,平凡な人々のあいだに繰り返されてきた伝承文化が保護の対象になるとの価値観が定着したことにもよるが,それにもまして昭和30年代以後の経済社会の変貌に伴って,営々として長きにわたって継承されてきた民間伝承が絶滅に瀕したという現状認識に負うところが多い。ただ,無形の民俗文化財は生活様式につれて変化するという宿命を内包しているものであるから,それを指定し保護しようとする場合,ある選択がなされねばならないことは当然であり,生業を拘束するとか「善良」な風俗に反するような分野の無形の民俗文化財は,指定そのものになじまないといえる。よって,重要無形民俗文化財として指定するには,それ相応の基準にもとづかねばならないことになる。この点,現行の指定基準は,風俗慣習においては〈由来,内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの〉,〈年中行事,祭礼,法令等の中で行われる行事で芸能の基盤を示すもの〉のうちでとくに重要なものとしており,民俗芸能については,〈芸能の発生又は成立を示すもの〉〈芸能の変遷の過程を示すもの〉,〈地域的特色を示すもの〉のうちでとくに重要なものと規定している。この指定基準については,無形の民俗文化財そのものが構造的に一体をなすものとして,風俗慣習と民俗芸能とで別立ての基準を設けていることを疑問視する声もある。指定制度が発足してから現在までの重要無形民俗文化財は,上記指定基準にもとづき全国各地から地域的特色のあるものが数多く取り上げられているが,ほぼ3類型に分類できるよう運用されているといってよい。風俗慣習にかかわるものでは,「岩木山の登拝行事」,「男鹿のナマハゲ」,「六郷のカマクラ行事」,「佐渡の車田植」,「奥能登のアエノコト」,「甑島のトシドン」,「南薩摩の十五夜行事」などが指定されている。大規模な祭礼行事に関わるものでは,「室根神社祭のマツリバ行事」,「秩父祭の屋台行事と神楽」,「高岡御車山祭の御車山行事」,「青柏祭の曳山行事」,「高山祭の屋台行事」,「京都祇園祭の山鉾行事」,「博多祇園山笠行事」,「唐津くんちの曳山行事」など大規模祭礼に地域的特色のある山車・屋台の類を繰りだすものが指定されている。また,民俗芸能にかかわるものでは,「アイヌの古式舞踊」,「早池峰神楽」,「秋保の田植踊」,「大日堂舞楽」,「板橋の田遊び」,「山北のお峰入り」,「越中の稚児舞」,「花祭」,「壬生狂言」,「淡路人形浄瑠璃」,「西祖谷の神代踊」,「八女福島の灯篭人形」,「高千穂の夜神楽」,「多良間の豊年祭」など著名なものが民俗芸能の各分野から取り上げられている。これら重要無形民俗文化財では,指定件数からみると,民俗芸能関係のものが多いものの,決して風俗慣習にかかわるものが少ないのではなく,充分に調査が行き届いていない結果なのである。ともかく,無形の民俗文化財という多数の母体のなかから選んで重要無形民俗文化財に指定して価値付けするとともに,それを伝承するよう保護助成の策が講ぜられていることを忘れてはならない。現行では,地域伝承活動の名目で助成措置が講じられている。その内容は,周知のための記録作成,現地公開に必要なものの修理,後継者を育成するための伝承教室の開催などに要する費用の一部を国庫補助で支援しているのである。保存団体の人々はもちろん,国民一般の理解の輪がひろがることが要求されるであろう。