50音順    検 索

●ジャン=パウル

ヨーロッパ ドイツ連邦共和国 AD1763 ハプスブルク朝

 1763〜1825 ドイツの作家。本名ヨーハン=パウル=フリードリヒ=リヒターであるが,ルソーに私淑し,その名をとって自らもジャンと呼ばれることを欲した。父の早逝を境に家庭は窮乏をきわめ,ライプチヒでの学業を断念して帰郷し,家庭教師や小学校長を務めるかたわら著作活動に力を注いだ。貧困な現実生活から無限の空想が生まれ,ルソーヘルダーの路線を継承して感情面の解放を主張,同時に当時の合理主義的世界観を批判した。それはゲーテ・シラーの古典主義の否定につながったが,一方,実生活の苦痛に養われた彼の現実感覚は,ロマン派の耽美主義をもいさぎよしとしなかった。当時のドイツの文壇で彼はアウトサイダー的な立場を占めている。それだけに後世に及ぼした影響は多様で,奔放な着想と恣意的な気分は後期ロマン派の詩人たちを鼓吹し,現実に対する鋭い諷刺は19世紀後半のリアリズム小説を刺激し,さらに旺盛な批判精神は,その後のジャーナリズムにおける政治・社会論に活力を与えている。彼の作品は主として長編小説で,『ヘスペルス』(1795)は彼の本領である豊かな感受性と諷刺の横溢した出世作,『巨人』(1803)は古典主義・ロマン主義の精神の「巨人族」に反対し,気品・感情・行動力の一体となった高邁な人間の原像を求める,彼の最大の小説で力作。そのほか数編の小説のほか,重要な著作として,古典主義文学理論の対極をなす『美学入門』(1804)がある。