●シャーマニズム
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精霊信仰にもとづく原始宗教の一つ。東北シベリアの古シベリア族にその典型がみられるが,トルコ・蒙古・満州・朝鮮などのウラル=アルタイ語族のあいだで広く発達している。『魏志倭人伝』の記述に,邪馬台国の女王卑弥呼(ひみこ)が〈鬼道をよくし,衆を惑わす〉という記述があるが,彼女もシャーマンだったという解釈が一般的であり,日本の原始神道もまたシャーマニズムの系統に属しているといわれている。シャーマンの語源については諸説があり,サンスクリット語のシュラマナ,=沙門(しゃもん,出家))・ペルシャ語のシュメン(偶像・ほこら)などとする説が代表的なものであるが,トゥングース語で巫者・呪医を意味するSaman とする説が支配的である。シャーマンは,歌・太鼓・舞踏・麻酔剤や興奮剤などの補助的手段を通じていわゆる神がかりの状態になり,死者と交通して神意や予言を告げたり,悪霊を追い払ったりする。シャーマニズムの宗教としての特色は,シャーマンが神霊と直接交通する点にある。すなわち神霊がシャーマンにのりうつり直接神意を示すという形をとるのである。これは,より発達した宗教での,祭司はあくまでも神に仕える立場にとどまり,間接的に神託を伝えるにすぎないという関係とは著しい対比をなす。また,もっと原始的なアミニズム(精霊教)とも異なり,善悪という二元観念および天界・現世・冥界と宇宙を三分する世界観を備えており,それに付随して教義・神話・宗教儀式も発達したものをもっている。ただ,シャーマニズムにおける神霊の概念は,各部族によって若干異なることがある。古アジア諸族では超自然的な存在にたいする漠然とした畏敬の念を基礎にしており,ブリヤート・タタール・ヤクートなどでは祖先崇拝の側面が強く教義や儀礼も進んでいると考えられる。なお,今日学界では,シャーマニズムはシベリアやウラル=アルタイ語族以外にもその存在を認められている。ようするに,神霊と巫者との直接交通を基軸に信仰が形成されていることが肝要なのであって,こうした観点からするならば,シャーマニズムはアジアにかぎらず,広く世界に分布していると考えることができるのである。【日本のシャーマニズム】原始神道にその影響が顕著といわれるシャーマニズム的要素も,大和朝廷の支配力が拡大し,神道がアマテラスオオミカミを頂点とする体系に一元化されるにつれ,しだいに姿を消していくことになる。そして,主として農村・漁村・山村地帯にその存在範囲を狭められていくようになる。今日,日本のシャーマンはたいがい女性である。神子(みこ)と呼ばれる女性がいて,湯神楽などのシャーマニズム的神事を行ったりする。神子はまた巫子とも書くが,男性の場合には“覡(おとこみこ)”といって区別する例もある。現在の神社信仰では,神子は神宮の下役・補助職になっており,とくに巫女と表されるものの大半は神職としての実体をほぼ失っているが,その起源は神主(かんぬし)などよりも古く,古代にあっては神霊と交渉する主役の地位にあった。『日本書紀』において,景行天皇の妻の神功皇后が,武内宿禰に琴をひかせつつ神事を行い,神意を占ったという記述がみられる。これは日本におけるシャーマニズムの例証としてよく引用されるが,同時にまた,卑弥呼が神功皇后であったとする説の論拠ともされている。現代また,神社には直接関係せずに,死者の霊の“口寄せ”をする女性が全国各地に存在する。これを市子(いちこ)ともいい,東北地方では“いたこ”と呼ばれる。青森県の恐山(おそれざん)のいたこが有名である。関東では“あずさみこ”といわれている。沖縄には,権力者の近親の女性による“のろ”が存在し,シャーマン的な役割を果たしていた。のろが政治権力との関係を濃密にもっているのに対し,職業的シャーマンとして“ゆた”がいた。のろと違い社会的身分は低いが,神がかりになって神意を示したり,呪医的治療を施したりしている。