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●社会言語学 しゃかいげんごがく

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 言語学と社会学との境界領域の研究,すなわち,言語を社会的な場面(たとえば,性別・年齢・階級・職業・人種)のなかでとらえる研究のことである。これは,近年めざましい成果をあげている。いわゆるハイフン付き言語学の1種であって,非常に守備範囲の広いものである。したがって,社会言語学こそ言語学そのものであって,「社会(socio‐)」というハイフン付きにする必要はまったくないと主張する学者もいる。また,社会言語学は,個人言語の変種を扱う場合と,言語集団の年齢差・社会階層・教育程度などによる変種を扱う場合とに大別される。前者はミクロ社会言語学,後者はマクロ社会言語学と呼ばれる。

【欧米における社会言語学】フランスの言語学者で,印欧語比較文法研究の碩学メイエ(1866〜1936)は,〈言語活動(ランガージュ)は,明らかに社会的事実である〉とし,言語変化と社会とのかかわりについて早くから着目していた。そして,ヴァンドリエスバイイらとともに,言語を社会的所産として考える立場の言語社会学を打ち出した。これには,意味変化の社会的・文化史的研究,隠語の成立と構成,借用語の研究などが含まれていた。このほか,言語と社会を扱った研究として,サピア=ウォーフの仮説(言語が,それを用いる言語社会の文化を組織化するとの説)や,地域による言語の変種を扱う言語地理学(これは,すでに19世紀後半以降,本格的研究がすすんでいる),などが存在する。しかし,社会言語学が言語学の1分野として台頭してきたのは,1960年代後半のアメリカでのことである。これは,チョムスキー(1928〜)の変形生成文法の扱う範囲が標準語に限られ,いわゆる社会方言が無視されたことに対する反発と補充に起因している。社会方言は,地域方言と並ぶ重要な研究対象であって,最近,とくに注目されているものである。これは,性別(男・女)・年齢(老人・中年・ティーンエイジャー・幼児など)・階級(上流・中流・下層)・職業(医者・僧侶・商人・日雇労働者・漁師など)・人種(白人・黒人・プエルトリコ人など)による言語の違いのことである。これらの差異は,ただ単に特殊なもの,卑賤なものとして除外するわけにはいかない。とくに人種のるつぼといわれるアメリカ合衆国では,このような気運が高まり,1964年のステュワートの黒人英語の研究や,1966年のラボフのニューヨーク市における社会方言の研究をはじめとして,社会言語学は以後大いに進展している。

【日本における社会言語学】日本では世界に先駆けて,1950年代初頭から同種の研究が行われていた。国立国語研究所(1948年,昭和23設置)の大規模実態調査「言語生活の研究」がそれである。たとえば,『言語生活の実態−白河市および附近の農村における』(1951,昭和26)・『地域社会の言語生活―鶴岡市における実態調査』(1953,昭和28)・『敬語と敬語意識』(1957,昭和32)などがそれである。その後,アメリカから社会言語学の概念が導入され,社会言語学のシンポジウムなども開催されている。なお,柴田武によれば,日本の抱えている社会言語学の課題として,敬語使用(時代の変化に敬語がいかに対応していくか)・国字問題(欧米文化との接触によって生じた日本語近代化の問題)・外来語のはんらん・共通語化(地域方言と共通語との言語接触の問題)などがあげられる。

〔参考文献〕「言語」1982年10月号,大修館

柴田武『社会言語学の課題』1978,三省堂