●市民革命 しみんかくめい
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市民革命とは,一般に,資本主義的生産様式の一定度の進展を背景としながら,封建的・絶対主義的な権力秩序を解体し,近代市民社会に適合的な権力秩序を実現する画期をなしたと考えられている政治的変革をさす。これには,具体的に,17世紀のイギリス革命(清教徒革命と名誉革命),18世紀のアメリカ独立革命,フランス革命などが属すものとされている(というよりも,これらの諸革命をモデルとして,市民革命なるものの概念内容が抽出された)。市民革命の中心課題やプロセスは,それぞれの革命が位置する各国の歴史的前提条件や国際的環境の差異によってかなり異なる。たとえば,フランス革命においては領主制の廃棄が中心課題となったのに対し,イギリス革命の中心課題は,土地問題よりはむしろ独占の問題であった。また,フランス革命やアメリカ独立革命においては民衆運動の展開が顕著にみられたのに対し,イギリス革命においては民衆の介入が弱く,革命のプロセスにもかなり妥協的な色彩がみられた。だがこのような相違にもかかわらず,各国の市民革命は以下の二つの点で共通する内容をもっている。
まず第1に,市民革命は,特権にもとづく封建的な階層秩序を撤廃し,絶対王政の恣意的な支配や封建的な束縛から個人を解放することによって,自由かつ平等なる自律的個人,すなわち“市民”の結合体としての市民社会を実現させる画期となった。イギリス革命における「権利章典」がアメリカ独立革命における「独立宣言」,フランス革命における「人権宣言」はその端的な表現である。第2に,市民革命は,ブルジョワジーの支配する資本主義社会ないしは実現のための前提条件を確立した。先に述べた自由かつ平等なる個人の実現も,この条件を構成する一つである。というのも,等価の商品を交換することを前提とする資本主義社会においては,資本家(ブルジョワ)にとどまらず,労働力という商品の所有者である労働者も,自由かつ平等なる個人として市場に存在することが必要であったからである。さらに,市民革命において確立された私的所有権と商品の生産および流通の自由も,資本主義的生産様式の自由な展開を促し,ブルジョワジーの支配する資本主義社会の成立にあずかった。ただし,市民革命においては,自由・平等は政治的次元にとどまり,社会的次元にまで及ぶことがなかった。私的所有権は神聖不可侵なものとされたのである。そのことは,政治的・イデオロギー的次元において最も徹底して平等が追求されたフランス革命においてさえも,社会的次元における平等の追求にはきわめて消極的であったという事実から明らかであろう。反革命容疑者の土地を貧民に分配しようとした「ヴァントーズ法」は,あくまでブルジョワ社会の枠内で社会保障を求める一片の貧民救済立法と化したし,「農地均分法」(フランス)は全面的に拒絶されたのであった。
以上のように市民革命は,それ以前の封建社会に比較すれば,とくに政治的次元における進歩性によって特徴づけられるが,他方,後世の歴史において現出する社会主義社会ないしは共産主義社会と比較すれば,とくに私的所有の問題をめぐる保守性によって特徴づけられる。封建社会とも,社会主義社会ないしは共産主義社会とも異なるブルジョワ社会が展開するのは,市民革令がもたらしたこのような進歩性と保守性の複合という条件のもとにおいてなのである。そして,市民革命においては神聖不可侵なものとされた私的所有権の問題に関しては,のちに社会主義ないしは共産主義の思想において再検討され,ロシア革命を初めとする社会主義革命においてその解決が現実の日程にのぼることになるのである。