●シドン
アジア レバノン共和国 AD
レバノン南部の地中海に面し,ベイルートとティルスのほぼ中間に位置する都市で,現在名はサイダ。古代フェニキアの都市国家として,とくに前12世紀以降繁栄した。すでに前34年紀後半のバビロニア史料や,ウガリット叙事詩,テル=エル=アマルナ文書を初め,聖書にもしばしば登場する。シドン人は海上貿易に従事し,多くの植民都市を建設し,金銀細工や織物・紫染料の生産でも有名で,ヘレニズム時代にはガラス工業の中心地の一つとして栄えた。このため列強にねらわれ,アッシリア・エジプト・バビロニア・ペルシア・アレクサンドロス大王の征服を受けた。セレウコス朝シリアの時代に再度独立を達成したものの,前64年にポンペイウスによりローマの支配下に入った。アレクサンドリアの繁栄でしだいに重要性を失ったが,十字軍時代には,海岸に城塞が築かれ,重要な軍事拠点となった。1963年から組織的な発掘調査が行われ,フェニキア・ローマ時代の遺構・遺物が発見されている。現在は,農産物の集散地・漁業基地また石油の積出港になっている。