●実験心理学 じっけんしんりがく
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【歴史と定義】字義どおりに解すれば,心理的事象の解明に実験的方法を用いる心理学であるが,実験心理学の意味する内容は心理学の発展に伴って変遷した。19世紀前半までの心理学は“ひじかけいすの心理学”と評されたように,思弁的・哲学的な心理学であった。1860年フェヒナーは『精神物理学要論』を著した。彼はこの著書で精神物理学を身体と精神の関係に関する精密理論と定義し,“刺激強度のその弁別閾に対する比は一定である”というウェーバーの法則から,現在ウェーバー・フェヒナーの法則あるいはフェヒナーの法則と呼ばれている“感覚強度は刺激強度の対数に比例する”を導いて感覚測定を基礎づけ,今日の精神物理学的測定法の原形となった丁度可知差異法・当否法・平均誤差法の三方法を提唱した。このことによって,心理学においても,物理学や生理学と同様に精密な測定を伴う実験的研究が行われるようになり,1879年にはW.ヴントによってライプツィヒ大学に心理学研究室が設けられるにいたった。このようにして誕生した実験心理学は,思弁的方法によるそれまでの哲学的心理学に対して,実験的方法により,感覚・知覚を研究する心理学であった。そののち,エッビングハウスは無意味綴りを用いて,高等精神作用とされていた記憶の実験を行い,『記憶について』(1885)を出版し,O.キュルペ(1862〜1915)を中心とするヴュルツブルグ学派は,実験的研究によって思考が無意識的動機に導かれることを明らかにした。このようにして,心理学の対象領域の多くにおいて実験的方法が用いられるにつれて,実験心理学の呼称は無意味となり,対象領域ごとにその領域の名称を冠した心理学として独立し,実験心理学から離れていった。以上の経過から,現在では,比較的早くから実験的方法を取り入れ,それをおもな研究法として用い,感覚・知覚・感情・学習・記憶・思考・意志などの心理現象の理論的・法則的解明を目的とする心理学を習慣的に実験心理学と呼び,また,実験法そのものを研究する心理学も実験心理学と呼ばれている。【実験的方法】心理学の実験は,実験を行う実験者と実験を受ける被験者によって行われる。実験者は,研究対象である被験者の反応を従属変数とし,それに影響すると考えられる多くの独立変数のうち,その影響を検討しようとするものを実験変数として任意に変化させ,そのほかの独立変数の影響を統制して(統制される変数を統制変数という),実験変数と従属変数のあいだにどのような関係があるかを決定する。実験の本質は,実験者が統制変数を統制し実験変数を任意に変化させて,従属変数との関係を一義的に決定するところにあるが,心理学の実験ではこのことがつねに可能であるとは限らない。たとえば,知能水準(実験変数)と作業能率(従属変数)の関係を研究する場合,被験者の知能を任意に変化させることはできない。このような場合,知能検査によって被験者をいくつかの知能水準群に分け,知能と作業能率との相関関係を検討するが,このような方法は準実験法と呼ばれる。統制変数の統制法としては,その変数の影響を除去する除去法,実験期間中影響を一定に保つ恒常維持法,影響を反対方向に作用させて相殺する相殺法,複数の等質な被験者群をつくり,特定の条件下で実験を施す実験群と,それを施さない統制群とで反応を比較する統制群法などがある。また,統制変数の影響を統計的に処理し得るように実験変数を配置し,実験変数の効果とそれらの交互作用の効果とを同時に検討することができる実験計画法も用いられる。