●敷物 しきもの
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広義には保存や装飾などを目的として物の下に敷くもの全体をいうが,通常は床に敷くものをさす。日本のように床に直にすわる生活習慣を持つ国では,すわった場合の快適さが最重視されるが,西欧など椅子が使用される地域では,室内の美化と足ざわりの良さが目的とされる。前者のおもなものとしては,むしろ,ござ,畳,座布団など。後者には絨緞(じゅうたん=カーペット),ラック,マットなどがある。カーペットは緞通(だんつう)や毛氈(もうせん)とも訳され,おもに羊毛を材料としたパイル織り,またはシャトル織りの敷物。昨今では,化学繊維によってつくられたものもあり,羊毛との混紡のものも出回っている。代表的なものは,ペルシャを初めとするオリエンタルカーペット,中国の緞通,イギリスのアクスミンスターなど。【西欧の敷物史】手織りのカーペットはすでに旧石器時代,樹皮を用いたものが存在したといわれる。しかし,古代ギリシア,ローマでは,大理石のモザイクで床を飾るのがふつうで,敷物を敷く風習はなかった。ヨーロッパの中世においては,住居の室内は板敷が一般的となったが,最初は地のままに放置されていた。東方のオリエントからカーペットが移入され,珍重品扱いされるようになったのは,十字軍の遠征のころからである。もともと西欧風のカーペットが発生したのは,トルコ,カフカス,トルキスタン,ペルシアなどの遊牧民族のあいだでのことで,テント生活にかかわっている。テントのなかの砂の上に手織りのカーペットを敷き,彼らはそこで日常の生活を営んでいた。生活の知恵と慰安のほかに,ペルシアなどのイスラーム圏では,祈祷用としても用いられたといわれる。それが,十字軍遠征による東方文化との交流で,ヨーロッパに伝えられた。16世紀には,その花柄や幾可学模様,色彩の美しさが富豪たちの目にとまり,彼らの室内を飾る愛用品となった。現在でも東方各地で産出される伝統的な手織りのカーペットは高価なものとして尊重されているが,工業化が進むにつれ,一般家庭では大量生産によるものが手軽に入手されるために,広く用いられている。
【日本の敷物史】起源としては,ござやむしろが一番古く,土間にもみ殻,わら,枯草などを積み敷いて,その上にむしろを敷き起居していたといわれる。その後,床に板やすのこを張るようになってからも,たとえば囲炉裏の周囲には,わらむしろを敷いて座をつくるなど,長く用いられた。今日でも農村部では,そういう風俗がみられるし,町家でも板張りの床の一部に縁取りのござを敷く習慣がある。中世までは武家の住居においても床は板張りで,すわる部分に個人用の敷物が使われていた。畳敷きのいわゆる座敷が登場したのは,近世になってからである。それまでは畳に似た厚手の敷物を広い板間のあちこちに配置,座布団のように用いられていた。そのように普段は畳を使わずに積み上げておいて,来客があった折などに運んできてすわらせる風習は,今なお“つんだたみ”などと呼ばれて,奄美の島々に残されている。近世以降,畳がしだいに一般的なものになってくると,さらにその上に敷くものとして,座布団が使用されるようになった。しかし,初期のころの座布団は,現今のものと違って,個人用のござに縁取りしただけのものである。綿を入れた座布団は本綿があまねく供給されるようになってからのもので,一般家庭に普及するのは20世紀に入ってからである。敷物と寝具は,かつては今日のようにはっきりと類別されていなかった。西欧においても,民衆のあいだでは枯草やわらの上に寝起きするのがふつうであったように,日本でも土間にもみ殻やわらしべを厚く積み敷いて,そこが寝所とされていた。これは現在でも,東北地方や日本海側の島根県の一部に伝えられている。板間の寝室の敷居を10寸弱の高さにして,わらしべを積み敷き,その上に寝ござと敷布を敷いて寝床をつくるのである。また,板間にただ寝ござのみを敷いて寝る風習は東海道以西の暖地ばかりか,最暑期にはより広範囲でなされている。