●残存 ざんそん
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現在の文化の要素や社会の制度に古い部分が残っているという考え方。この概念は,人類学においては前世紀に流行した進化主義や文化圏説の重要な前堤となっていた。たとえば,婚姻制度が乱婚から一夫多妻婚や一妻多夫婚をへて,当時の西欧社会において一般的であった一夫一婦婚(単婚)へ進化するという仮説をたてるとき,未開社会や非西欧社会にみられた単婚的でない形態を,それぞれ進化の過程で取り残された段階を表すものとみなした。乱婚のように当時ですらそのまま残っていないものは,父とその兄弟を同一の名称で呼ぶ親族名称をもって過去の制度の残存の証拠とした。文化要素の分布から文化の伝播を考える場合も,現在分布している要素が過去の残存であるという前堤に立っている。しかし,いかに未開社会であっても文化要素や社会制度がつねに化石のようにそのまま保存されるとは考え難い。残存にはそれなりの機能的必要性なり一定の条件が作用しているであろうし,形が過去にあったと類推されるものと同じであってもそれが残存であるか否かは歴史的な証明を必要とする。したがって,残存およびそれによる起源の推測は資料的裏づけのない場合,無意味であるが,常識になじみ易いせいか,一般に流布している。