●珊瑚礁 さんごしょう
AD
【珊瑚礁をつくる生物】おもなものは刺胞動物門,花虫綱・六放珊瑚亜綱に属する石珊瑚目で,そのほか少数ながら八放珊瑚亜綱のアオサンゴ・ヒドロ虫綱のアオサンゴモドキなども造礁作用にあずかっている。海藻では紅藻目のイシモが礁をつくることもある。【石珊瑚類の生態】単体性のもあるが,ほとんどすべて小さな個虫が集まって群体をつくり,固着生活をしている。個虫はポリープ型で,動物プランクトンを餌としている。動物質を分解する酵素をもっているが,植物質分解酵素をもたず,植物プランクトンは摂食しない。体の組織中に褐虫藻が共生しており,石珊瑚はその排泄物を利用している。生殖巣は胃腔内の隔膜中に生じ,卵と精子は胃腟中に出て授精が行われる。胚はプラヌラ幼生に生長してから外界に放出される。海に出たプラヌラ幼生は,数日間浮遊後着底し,変態を行ってポリープ型の個虫となる。個虫は分裂・芽出によって無性的に増殖し,大きな群体を形成していく。
【石珊瑚類の骨格】骨格は外皮から分泌され,1個虫の骨格を莱(さや)という。群体になると各個虫の莱は共骨部で連なり,全体として強固な塊となる。群体骨格の形状は,球状・塊状・枝状・盤状その他千差万別である。群体の生長は種により,環境によって異なる。礁の発達は死んだ群体の骨格が堆積し,その上に新しく別の群体が生育することによって進行する。
【珊瑚礁の分布】石珊瑚類が繁殖できるのは共生褐虫藻の光合成に必要な太陽光線の透入する深さ,30〜40mまでである。また水温周年摂氏20度を下らず,淡水のまじらぬ海でないと,礁を形成するほどに繁殖できない。したがって珊瑚礁の分布はだいたい赤道を挟んで南北回帰線内に限られる。しかし太平洋・大西洋の東側は熱帯でも冷たい湧昇流があるので珊瑚礁は発達しない。インド洋・太平洋は大西洋に比べ,石珊瑚類の種属・数量ともに遥かに多い。
【珊瑚礁の成因】珊瑚礁の形状は裾礁・堡礁・環礁・卓礁(小さな独立礁で礁湖のないもの)に区別される。ダーウィンは地殻の沈降に伴い,珊瑚礁は上昇する海面にむかって生長をつづける結果,裾礁は堡礁となり,ついに環礁になるという沈降説(ダーウィン・ダナ説)を立てた。マレイは海中に台地があると上層でプランクトンが増殖し,その遺骸が沈積して台地は浅くなり,珊瑚虫が着生して上方に生長をつづけ,環礁ができるという海中台地説を堤唱した。またデイリーは大氷河時代海面は少なくとも50mくらい下がって,陸地や島のまわりの露出部が侵蝕を受けて平らな台地が形成されたが,間氷期が来て氷がとけ海面が上昇し,温度が高くなるとともに台地の上に珊瑚礁が発達したという氷河説を出した。この説によれば現在礁湖の深さがどこでも60m以内であることが,具合よく説明される。以上3説のうち基本的には沈降説が有力とされ,場合によっては他の2説が適用される。
【珊瑚礁の研究】初期の研究は航海や旅行の際の観察をもとにしたものであったが,60年くらい前から固定した実験室で実験的研究が行われるようになった。1928〜29年イギリスとオーストラリアの学者が共同で行った1カ年にわたる大堡礁学術調査は画期的事業であった。ついでに日本によって1934年(昭和9年)パラオ熱帯生物研究所が設けられ,1943年戦争のため閉鎖されるまで珊瑚礁の生物学的実験がつづけられた。第二次世界大戦(1939〜45)終結後,数十年たって珊瑚礁に対する学術的関心が高まり,1980年国際珊瑚礁学会が組織された。日本では沖縄本島瀬底の琉球大学熱帯海洋科学センターを中心に珊瑚礁の研究が進められ,機関誌「Galaxea」が発行されている。十数年前からオニヒトデの食害による珊瑚礁破壊が世界各地でおこり,珊瑚礁生態系保護の上から大きな問題となっているが,いまだオニヒトデ異常繁殖の原因もわからず,効果的な防除法もない。
![]()