●三国遺事 さんごくいじ
アジア アジア AD
本書は高麗の高僧,普覚国尊一然(1206〜89,俗名は金見明,現在の慶尚南道慶山出身)が,その晩年(忠烈王代)に撰したようである。ただし本書は一然の生前には刊行されず弟子の無極(1251〜1322)が補録して「無極記」と署名してのち,これを版にしたものであろう。本書は正史『三国史記』に対するもので,新羅・高句麗・百済の三国だけでなく広く古来からの朝鮮の遺文逸事を収録している。まさに本書は現存する朝鮮古代史研究上の最重要史書である。本書は巻頭に「王暦」が1篇ある。なかには三国と駕洛・後三国の比較年表があり,『三国史記』の年表とは異なる別個の史料価値を有する。第1,2巻は紀異篇で,檀君説話から始まって楽浪国・扶余・勃海・マッカツ※注1※・黒水女真・三国の説話遺聞を録し,駕洛国記を抄録しているが,檀君伝説は本書に初見し,また駕洛国記も現在では本書によってのみうかがい知ることができるのである。第3巻以下第7巻までは仏教説話で,興法・塔像・義解・神呪・感通・避隠・孝善の7篇からなり,荒唐無稽な説話も多いが,新羅時代の社会的記述が多く,また高麗時代の事実,撰者の生存時のことも記しているので同時代史的な面もある。また今は伝存しないが,当時は存在した史料もかなり用いているので貴重である。とくに本書に収められている郷歌14首は日本の万葉の古歌にも比すべきもので,朝鮮古代文化・語学の研究上重要である。〔参考文献〕三品彰英遺選『三国遺事考証』上・中
村上四男「三国遺事解説(その1)」朝鮮学報99・100合刊
![]()