●鯖大師 さばたいし
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旅僧への魚の献貢が幸を,その拒否が不幸をもたらすという呪詛奇跡譚(じゅうそきせきたん)。四国八十八箇所に多いが,北は宮城県から南は福岡・宮崎・熊本の各県に及ぶ。『阿波名所図会』巻下,『雲錦随筆』巻四によれば,阿波国海部郡八坂ケ浜で,旅中に飢えた行基(ぎょうき)が鯖の荷を積んだ馬方に鯖一尾を乞うた。馬方が拒むと行基は〈大坂や八坂坂中鯖ひとつ行基にくれで馬のはら病む〉と歌をよみ,馬はたちまち腹病をおこした。鷲いた馬方が無礼をわび鯖を献じたところ行基は「くれで」を「くれて」「はら病む」を「はら止む」と書きかえ,馬は平癒した。この旅僧の名を弘法大師とする話も多い。『十訓抄』第七の林懐(りんかい)僧都魚食の話も同様の観想に出るものであろう。タイシとは本来大子,すなわち大いなる貴い神である。鯖大師の伝説は,巡行する貴い神に対して行われた神饌(しんせん)献納の話が仏教化されたものと思われる。柳田国男は,漁民が鯖を内陸に運ぶ際,境の神にこれを供えた習俗に関係があるかと推論している。〔参考文献〕柳田国男「鯖大師」(『昔話覚書』1943)