●サッフォー
ヨーロッパ ギリシャ共和国 AD612 ヘラクレイオス朝
前612年ごろ〜前570年ごろ 古代ギリシア最大の女流詩人。エーゲ海北東部のレスボス島のミュティレーネまたはエレソスで良家の娘として生まれ,政争に巻き込まれて幼少期をシチリアに過ごし,帰国後ミュティレーネで生涯を送った。ケルキュラスという裕福な男と結婚し,娘のクレイスを生んだ。彼女の生涯についても家族についても最大の資料は彼女のつくった叙情詩であるが,今はその多くは失われている。作品集はヘレニズム時代には9巻本で伝えられていた。第1巻はサッフォー=スタンザからなる詩を含み,有名な『アフロディテ讃歌』を含んでいる。また兄弟カラクソスの航海の安全を祈り,エジプトで遊女にうつつを抜かす彼をたしなめる歌も存在する。第9巻には,さまざまの形式の祝婚歌が集められていたようである。サッフォーの多くの詩は恋の情熱,それもとくに若い乙女にむけられたもの,失恋の悲哀・嫉み,そのような感情を赤裸々に歌い上げている。イオニア方言で率直に語られた心情は,彼女個人のものでありながら同時に普遍性をもち,聴き手の共感を呼ぶ。そこには感情の波に翻弄される自分を冷静に観察するもう一人の彼女が存在する。生涯の多くを若い乙女に囲まれて過ごしたらしいことは作品の物語るところであるが,それはただちに同性愛の生活を暗示するわけではない。前6世紀のイオニアに多くみられた手芸や詩歌の結社のようなものが想定されてよいのである。ともあれ,彼女の崇拝者は古代世界に多かったが,キリスト教の支配する古代末から中世初期に彼女の業績の多くが失われ,レスボスの女(レスビアン)の悪名が今日まで残ったのである。