●祭司(司祭) さいし(しさい)
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神と信者の仲介者として公の祭祀を執行し,信者に説教や布教などを行い,教団の管理・運営にあたる聖職者。キリスト教やイスラーム教・ヒンドゥー教などの世界宗教では,信者を統合する規範が確立され,教義や祭式が定まっているので,祭司の分化が著しいが,教団や教義が未発達な未開宗教では,祭司の分化はほとんどなく,祭司はしばしばシャーマンや占い師などと同一視されている。【世界宗教の祭司】キリスト教のうち,カトリックでは,神と信者の仲介者としての聖職者は神聖性と権威が与えられ,ローマ=カトリック教会では,首長たる教皇のもとに枢機卿が置かれ,上級聖職者として司教と司祭・助祭・副助祭が,下級聖職者として侍祭と祓魔師・読師などがある。ちなみに神父とは司祭の尊称である。プロテスタントでは,万人祭司の思想が確立されているので,祭司は信者に対する教師としての性格が強い。教団によっては,教師は主教・司教・司祭・執事・助祭・副助祭・輔祭・副輔祭などに分かれる。日本基督教団では,教師は正教師と補教師に分けられ,教会の管理・運営にあたる。正教師は牧師,補教師は伝道師と呼ばれる。イスラーム教では,祭司は本来,認められていないが,これにあたる聖職者に,集団的礼拝の指導的立場にある長老やカリフと呼ばれる宗教共同体の指導者などがいる。ヒンドゥー教では,バラモンと呼ばれる祭司階級があるが,多くのバラモンは世俗的な職業に従事していて,寺院の祭祀を専業とするものは少ない。寺院の祭祀は,もっぱら相対的に地位の低いカーストや寺院に祀られる神を信仰するカーストの人々によって行われ,祭司間の上下関係はない。中国の大乗仏教の祭司制度は唐代に整備され,三綱といって寺院ごとに上座・寺主・都維那が定められたが,その後,別当・座主・長老という僧職が設けられた。中国から伝来した日本の仏教では,7世紀半ばに僧綱として僧正・僧都・僧師が定められたが,明治以降,僧官が廃止され,これらの名称は僧階となり,これを宗派ごとの管長が授与することになった。民族宗教としての神道では,明治中期に神官という名称が廃止され,祭司は神職という名称に統一された。現在,神職は宮司・権宮司・彌宜・権彌宜に分かれている。なお,神職を神主とか大夫・横屋・祝(はふり)・宮守などと呼ぶ地方がある。沖縄では,御嶽(うたき)と呼ばれる聖地で,祝女(のろ)とか司と呼ばれる女性祭司が公的祭祀をおこなっている。
【未開宗教の祭司】祭司の階層分化が未発達な社会では,祭司はしばしば病気を治療したり,不幸や災害をもたらす悪霊を取り除くシャーマンや呪医・予言者などと同一視される。南米ボリビアのシリオノ族やオーストラリア北部のムルンギン族のあいだでは,同一人物が祭司とシャーマンの役割をもち,また,シベリアのブリヤート族のシャーマンは,祭司と呪医・予言者の3役を兼ねている。南インドのコタ族は祭司とシャーマンを一応,区別しているが,両者は同一の神と交渉をもっている。そして祭司が死亡して,その地位が空いたりすると,シャーマンが神がかりして後継者になるという。しかし,アラスカ北部のエスキモー社会では,祭司とシャーマンがはっきり区別されていて,祭司が獲物の増殖や集団の繁栄などの公的祈願を行うのに対して,シャーマンは主として病人の治療にあたっている。タイ北部のミャオ族のあいだでは,祭司とシャーマンは同一視されていたが,現在,両者はすっかり分化していて,祭司は人間の死後の霊魂を,シャーマンは人間の現世の霊魂を担当している。こうして祭司とシャーマンの分化がおこると,両者が序列化され,祭司はシャーマンよりも上位に置かれる。
〔参考文献〕マックス=ウェーバー,世良晃志郎訳『経済と社会』
岸本英夫編『世界の宗教』1965,大明堂
佐々木宏幹『シャーマニズム−エクスタシーと憑霊の文化−』1980,中央公論社