●サイゴン
アジア ベトナム社会主義共和国 AD
ヴェトナム南部にある都市。人口は約342万人(1982)。かつてはヴェトナム共和国(南ヴェトナム)の首都であったが1974年の南北ヴェトナム統一後はホーチミン市と改称されている。メコン=デルタ稲作地帯の集荷・輸出の中心地であり,またヴェトナム第一の貿易港でもある。西隣のショロン地区は華僑の町。【位置・気候】サイゴンは南シナ海に注ぐドンナイ川がつくるデルタ地帯の中心にあり,その支流サイゴン川を海から約100kmさかのぼった所にある。ドンナイ=デルタはメコン=デルタにつながっている。熱帯の低地にあるため高温・多湿で,典型的な熱帯モンスーン気候である。年平均気温は27.5℃で,年較差は約4度しかない。年降水量は1,808mmだがその大部分は5月から11月にかけての雨季に集中し,1月から3月にかけては40mmしか降らない乾季となる。
【沿革】ヴェトナム南部はもともとクメール人が居住していたが16世紀後半以降,ハノイに都するヴェトナム人王朝黎朝の権臣阮(グェン)氏は,ユエを拠点として南方に勢力をひろげてゆき,17世紀中ごろにはドンナイ川デルタに達した。その後,阮氏の勢力が南ヘ広がるにつれてヴェトナム南部におけるサイゴンの重要性はますます増していく。一方,中国では17世紀に明が満州族(清)によって滅ぼされたため,ヴェトナムヘ移住してくる中国人が多かった。ショロンは,こうした中国人(華僑)によって1778年に建設された町である。18世紀後半に勃発した西山党の乱はヴェトナム全土をおおい,その結果,阮氏も黎朝も滅ぼされて西山朝が成立したが,阮氏一族でただ一人生き残った阮福映(グェン=フック=アイン)は,フランス人の助力を得てメコン=デルタに支配権を確立することに成功した。1789年にはフランス人将校ピュイマネルによって,サイゴンに八角形の西欧式要塞が建設されている。やがて阮福映は阮氏の故郷ユエを国都に阮朝樹立に成功し嘉隆(ザ=ロン)帝と称するようになるが,良港をもつサイゴンは,メコン=デルタの穀倉地帯を背景に,ヴェトナム南部の経済的中心地としての位置を確固としたものにしていった。1887年以降は東南アジアのフランス領を統轄したインドシナ連邦が形成され,その統治の中心はハノイに移ったが,サイゴンはフランス領インドシナ経済の中心として繁栄し,フランス風の優雅な町づくりが進められ“小パリ”と呼ばれた。