●五段階評価 ごだんかいひょうか
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わが国の学力評価は戦前の絶対評価から戦後の相対評価へと推移してきた。1900年(明治33)に始まる「甲乙丙丁戊」の五段階評価,1938年(昭和13)からの「十点法」,1941年(昭和16)からの「優良可」の三段階評価,いずれも教師の主観による絶対評価であった。今日用いられている相対評価は1949年(昭和24),正規分布にもとづく五段階相対評価として登場した。【五段階相対評価の問題点】五段階相対評価は,児童生徒の教科の成績を記載するために適用されてきた学力測定法である。この評価方法は集団の得点が正規分布になることを前堤とし,集団内部での個人得点の相対的位置を得点の平均と標準偏差にもとづいて正規分布を5区分するものである。その割合は5(7%)・4(24%)・3(38%)・2(24%)・1(7%)としている。この評価方法によれば,児童生徒個人の集団内部での相対的位置(順位)が明確になる反面,いくつかの問題点があげられている。第1に学級集団の得点分布が正規分布になると仮定するところに,この評価方法の理論的前提を置いているが,正規分布とは本来,人為的働きかけのない状態で成り立つとされるものである。これを40名前後の,しかも教育的な働きかけをなした結果に適用するのは不合理である。第2に,五段階相対評価の方法は得点の平均値と偏差値とを基準にしており,教授目標を基準としたものではないので個々の児童生徒の学習進度を知ることができない。第3に,同じ集団に属する児童生徒同士の相対的順位にもとづいて評価を下すという方法であるため,児童生徒が,今後何を身につければよいかということに利用するのではなく,逆に人より良い点数を取りたいという歪んだ競争意識を育てる可能性がある。またすべての子供を一定水準以上にまで到達させようとする,意欲や見通しを欠くものである,などである。
【改革の方向】このように問題をもった五段階相対評価に対しては,近年いくつかの改革の方向が出てきている。その一つは,相対評価を与えるという点では同じだが,そのさい正規分布曲線にもとづく各評点の人数枠は取り払ってしまおうというもの,つぎに各教科ごとにいくつかの到達目標を設定し,それぞれの目標が達成されたかどうかを表示するというもので,一般に到達度評価といわれるものがある。この評価方法は集団の得点分布いかんにかかわらず,特定の内容を習得したか否か,また完全な習得の状態からどの程度隔っているかを示そうというものである。第3に相対評価やその他の評価に加えて別の観点からの評価を併記しようというものがある。具体的には児童生徒個人内の進歩度,努力度,学力内容からみた相対的長・短所などの評価,自己評価などをあげることができる。
最後に極端な考え方として通知表廃止論がある。この考え方はもともと学校が家庭に対して通知表を出さねばならぬという規定はどこにもないことに根拠を置き,代わりに個別面談や教育相談の重要性を強調する。
これら改革の方向のなかで,最も広範に試みられている方法は2番目にあげた到達度評価方式である。しかしながら,この評価方式のかなめともいえる到達目標に関しては,現在のところ何をもってそれが達成されたと判定すればよいかという,判定規準が明確になっていない欠陥がある。
〔参考文献〕梶田叡一『教育における評価の理論』金子書房
高木一郎『到達度評価とその生かし方』1981,図書文化