●甑 こしき
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穀物などを蒸す容器。強飯を蒸したり,餅・酒・味噌づくりなどに用いられた。底部に穴のあいた鉢形の容器に簀子などを敷いて水蒸気が通る構造をもつ。のちの蒸籠に相当。日本では弥生式土器に甑と推定されるものがすでにあるが,古墳時代中期になると,須恵器にも土師器にも明確に甑と認められるものが出現する。器体の両側に角形の把手が付くものが一般的だった。『日本書紀』,『萬葉集』,『倭名類聚抄』などにもその名が見える。炊飯を意味する“かしぐ”という語と関連があろう。奈良時代には甑と書いて,木製品があったらしく,檜,櫓の字も当てられ,曲物や刳物の甑があったことが考えられる。近年まで薩南諸島や琉球諸島では,クバやデイゴの幹を刳りぬいたり,カヤを束ねて巻き上げた編組品の甑も用いられて,クシチ,クシキ,クスツなどと呼ばれ,南九州では桶状の甑も用いられた。焼物の甑も,宮城県堤焼,徳島県大谷焼,鹿児島県苗代川焼などの窯場で焼かれていた。なお中世に,安産の呪として甑を産屋の屋根から落す習俗は,『平家物語』,『源平盛衰記』,『徒然草』に記載がある。