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●国富論 こくふろん

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 1776年刊,アダム=スミスの著,古典派経済学のバイブル的存在。前著『道徳情操論』(1759年刊)の一部として構想,5編よりなり経済の理論,歴史,政策の検討により資本主義の体系的分析を行った。産業革命初期にあって,国を富ませることは即ち国民各自の富裕化になると考え,当時流行の自然法思想を背景に利己的・営利的自然人の経済活動の総和が最大の国富をもたらすと主張した。ここには社会全体に“見えざる手”が働く予定調和の考えがあり,重商主義など独占的政治は自然秩序の妨害として斥けられる,つまり自由放任が高唱される。富を作るのは労働であり,生産効率上昇のためマニュファクチュア=分業(社会的分業も含む)が有効と主張。所得分配では賃金基金説,即ち賃金総額は既定のため努力をしても最底生活費しか配分されない傾向を述べる。

 国家の役割は,防衛・司法及び個人ではひきあわない公共的事業にのみ限定,即ち夜警国家思想をとる。生産の中核は資本であり,資本は貯蓄即ち満足の断念の結果発生し,労働分配を小さくおさえ,貧民の嘆きを耳にせず,ひたすら自由放任のなかで活動し,社会改善は経済人の自然本能に任すとするこの思想は,勃興期の産業資本に好適の理論であったといえよう。