●国際紛争 こくさいふんそう
AD
国際法の主体たる国家のあいだに生じる紛争をいう。国と外国人とのあいだに争いが生じたとしてもそれは国際紛争ではなく,その外国人の本国が,いわゆる外交的保護権を行使することにより国家間の争いになる場合は,広い意味で国際紛争となる。しかしながら,近年では国と国際的な機関や法人とのあいだの紛争がしだいに重視されていることに鑑み,国際紛争の概念も動揺している。【分類】国際紛争は,「法律的紛争」と「政治的紛争」に分けられる場合が多い。通常,国際法上の権利や義務の性質や範囲に関係する紛争のように,双方の紛争当事国がそれぞれ,自己の利益主張の正当性の根拠を国際法に求めている紛争を法律的紛争という。政治的紛争というのは,国の独立や主権に関係する紛争や,国際法が未発達なために,現行規範では解決不能とされる紛争のように,紛争当事国が正当性主張の根拠を法以外のものに求める紛争をいう。しかしながら,このような分類の規準は決して明確なものではなく,議論の余地がある。
【解決の方法】国際紛争は,国際社会におけるごくふつうの現象であるが,主権国家が併存し,分権的性質を特徴とする国際社会には,国際紛争を組織的かつ統一的に解決する公的制度はいまだ確立されていない。したがって一般的には,国際紛争は紛争当事国間の相互作用によって解決されることになり,その解決方法には平和的なものと強力的なものがある。伝統的国際法では,紛争当事国間の話し合いのような平和的解決方法とともに,報復や復仇などにみられるような強力的解決方法も肯定されていた。報復とは,国際法違反とはいえないが,自国にとって不都合な行為に対して同種同程度の行為で報いるものであり,復仇とは,国際法違反の行為により損害を蒙った国が同程度の損害を与える行為を意味する。いずれにせよ武力の行使を伴いうる強力的解決方法は,つねに,国際平和を破壊する戦争にまで紛争が拡大する危険をはらんでいた。19世紀後半に入ると国際平和維持の要請が高まり,国際紛争の解決方法としての強力的方法は一般に禁止されるようになり,平和的解決方法を一般条約で明記するようになった。1945年の国連憲章は第2条3項で,すべての加盟国に対し,〈国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない〉義務を課している。
【平和的解決方法】国際紛争を平和的に解決するために行われるものに,紛争当事国が相互に意見を交換しかつ調整する直接交渉の方法がある。直接交渉によって解決できない場合には,公平中立な第三者が関与して紛争の解決を促進することになる。第三者が関与する解決方法には,国際裁判・仲介・国際審査・国際調停・国際連合による紛争処理がある。国際裁判とは,第三者である裁判官が国際法にもとづいて審理を行い,その結果下した判決に紛争当事国が法的に拘束されることにより紛争の解決がはかられるもので,最も実効的な方法である。しかし,国際裁判の方法による解決に適しているのは法律的紛争のみであり,政治的紛争は国際裁判から通常除外されている。また,国際裁判が開始されるのは,紛争当事国の同意がある場合に限られている。国際裁判を除く紛争の平和的解決方法は,紛争当事国の和解を促進して解決をはかるものである。仲介とは,双方の紛争当事国が信頼する第三者に仲介してもらい解決の糸口をみつける方法をいう。国際審査と国際調停は,個人の資格で選ばれた委員で構成される委員会に紛争を付託して解決をはかるものである。国際審査は主として紛争事実の審査を任務とし,国際調停の任務は紛争解決のための勧告を含む報告書の作成である。ただし,この勧告は紛争当事国を法的に拘束するものではない。国際連合による紛争処理は,安全保障理事会や総会が紛争の審査・和解の斡旋・解決条件の勧告などで紛争解決をはかるものである。事務総長にこの機能を認める場合もある。