●国語国字問題 こくごこくじもんだい
アジア 日本 AD
その国の言語をどのように整理するか,あるいは改善するかをめぐる問題。国語問題ともいう。言語のうち,とくに文字の問題を取り立てて問題とする場合にもいう。わが国の国語国字問題をさすことが一般的であるが,諸外国の国語国字に関する問題をさすこともある。【問題意識の発生と解決】国語国字問題が発生するのは,国家や国民に,従来のものに対する不満が生ずるときである。この不満の原因は多くの場合,複雑にからみ合っており,その国の歴史,使用される発音・文字・語彙,対外的な諸事情などによって問題の取り上げ方,解決の方向が異なる。国語国字問題の背景にはこうした側面があるうえに,その解決策の選定にあたっては,国家権力による場合は別として,国民の合意と広範にわたる普及が重要な要件となるから,しばしば多くの困難が伴う。わが国では現在,表記(漢字・音訓・送り仮名・仮名遣い・ローマ字)について,国語審議会の答申にもとづき内閣訓令・告示の形で実施に移されている。
【わが国の国語改良運動】運動の盛衰はさまざまであるが,わが国で行われてきたもの,あるいは現在も行われているおもなものは次のとおり,[1]国語を全廃し他の国語(英語・フランス語など)を採用しようとするもの,[2]全国共通語(標準語)を確立しようとするもの,[3]言文一致をはかろうとするもの,[4]漢字制限・仮名専用・ローマ字専用を貫こうとするもの,などである。
【わが国における国語国字問題の時代区分】わが国において改善策が打ち立てられ,それが現在ひろく普及しているのは表記の領域のもの(漢字・仮名・ローマ字)である。そこでこの領域の改善の歴史の時代区分を試みるのが有効である。[1]1867年(慶応2)から1945年(昭和20)まで,[2]1946年(昭和21)から現在(昭和60年)まで。[1][2]を仮に「旧表記の時代」,「現代表記の時代」とすると,「旧表記の時代」は(ア)1900年(明治33),(イ)1921年(大正10)が大きな切れ目となる。(ア)は「小学校令施行規則」が改正された年であり,小学校の教授に用いる仮名・仮名遣い・漢字が規定された。これによれば,平仮名および片仮名の字体を統一し,漢字の字音の仮名遣いを旧仮名遣いから発音式のものに改め,尋常小学校4年間に教える漢字の字種を1,200字としている。これらの改正は小学校課程だけに限られてはいるが,教育の合理化・能率化をはかるべく行われたものである。
(イ)は文部省に臨時国語調査会が設置された年であり,漢字の節減・仮名遣いの改定・口語文の整理が案件となった。「常用漢字表」(1923年・大正12,1,962字。実施にはいたらず)「国語仮名遣改定案」「字音仮名遣改字案」(1924年・大正13,いわゆる発音式,実施にいたらず)などを立案し戦後の国語施策に示唆を与えた。1921年(大正10)にはローマ字専用をめざす「東京ローマ字学会」が「日本ローマ字会」となり,1920年(大正9)には片仮名専用をめざす現在の「カナモジカイ」の前身「仮名文字協会」が設立されている。「現代表現の時代」は(ウ)1966年(昭和41)が切れ目となる。戦後は内閣訓令・告示の形で実施に移され,法令・公用文書・教科書などで実施された。「現代かなづかい」(1946,昭和21)「当用漢字表」(1946)「当用漢字字体表」(1948)などがそれである。ところが,1966年(昭和41)にいたり,戦後の国語施策に見直しの気運が高まり,「国語施策の改善の具体策について」という諮問がなされた。国語審議会はこれを受けて「送り仮名の付け方」(1973,昭和48),「常用漢字表」(1981,昭和56,1945字,字種・音訓・字体を併せ示す)が訓令・告示された。戦後の国語施策の流れを大局的にみると,適用分野が明確になり,制限的色彩が薄くなったことに特色がみられる。
〔参考文献〕『岩波講座日本語3 国語国字問題』1977,岩波書店