●紅楼夢 こうろうむ
AD
中国,清の長編白話小説。原名は『石頭記』,別名は『金玉縁』という。全120回で,そのうち,前の80回は曹霑(号は雪芹)の原作,あとの40回は高蘭墅の続作である。清代小説中の第1に位置する名篇で,同じ人情小説の『金瓶梅』とは趣を異にし,『金瓶梅』が下層階級の恋愛関係を記しているのに対して,本書は“中国の『源氏物語』”ともいうべき,富貴紅楼の満人上流社会の恋愛物語である。大貴族賈家の貴公子賈宝玉と従姉薜宝釵・従妹林黛玉との愛情の起伏を軸にして綴られ,その間多くの男女が登場する。前80回は,栄華を誇る賈家に不幸な事件が相次ぎ,経済的破綻を生じたところで終わる。後40回は愛する林黛玉と結ばれないで,薜宝釵と結ばれた賈宝王が無常を感じて出家し,どこともなく姿を消してしまうところで終わっている。本書は一種の文学的自叙伝ともいえるもので,作者の曹雪芹は南京の名家に生まれ,一家没落後,北京に移って,貧窮生活のなかでこの小説を書いたが,1763年(乾隆27)2月12日急逝したため未完に終わり,1792年高蘭墅が原作者の残稿を整理したうえ,あとの40回を書きたして刊行した。広く読まれて一世を風靡し,紅学と称する一種の学問さえ生まれた。解放後,全国的に紅楼夢論争が展開され,各地で討論会が開かれたが,『紅楼夢』をもって,中国民族の生んだ文学遺産中,最も優れた一つとなし,中国の封建制度に対して激しい反抗の叫びをあげた“偉大なる憤怒の書”であるとみる点では一致している。〔参考文献〕松枝茂夫訳『紅楼夢』1940〜51,岩波書店
伊藤漱平訳『紅楼夢』中国古典文学大系44〜46,1974,平凡社
![]()