●行動科学 こうどうかがく
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人間の個人的ならびに集団的行動を厳密科学の方法によって研究し,それらに関する一般法則を見出そうとする,比較的新しい学際的学問領域の総称。中心となる領域は心理学・社会学・人類学。【発展の概史】背景には,心理学における機能主義・行動主義の流布や応用数学における諸技法の開発,第二次世界大戦中の軍事目的のための学際的協同研究体制の発展などが考えられる。この名称は,1940年代後半にミラーらシカゴ大学の自然科学者および社会科学者たちによって,従来の社会科学との訣別を意図して,使われはじめた。1953年には,フォード財団の支援を得て,スタンフォード大学に「行動科学高等研究所」が創立され,また同じ時期,同財団が「行動科学研究計画」を立案し巨額の研究費を出した。こうして,行動科学の名称が一般化するとともに実質的な展開をみせはじめた。もちろん初期には,単に自然科学的方法論を社会諸科学に応用するに留まり,新しい問題の発掘や新しい方法論の開発にはいたらなかったが,のちには,多変量解析法・ゲーム理論・情報理論のような行動科学固有の方法論の開発・応用が行われたうえ,言語行動・政策決定・国際関係など独自の問題設定も行われて,ますます発展した。そして最近では,核の脅威・環境汚染など具体的な社会問題や,実験室内の抽象的人間でなく現実の生身の人間の問題への取り組みが,この学問の特徴とさえなりつつある。
【含まれる領域】心理学・社会学(歴史社会学を除く)・人類学(考古学を除く)の3部門を主要な領域とし,これに政治学・経営学・法学(計量法学を含む)・地理学・生理学・神経学・教育学が加わる。
【おもな方法論と応用例】大別して調査・実験という古典的な方法と,数学モデルという新しい方法とに分かれる。調査は主として社会学・経済学・政治学などで,実験は心理学・生理学・神経学などで広く用いられている。数学モデルのなかには,サイバネティックス・情報理論・ゲーム理論・シミュレーション・多変量解析法・数理計画法・決定理論・記号論理学などが含まれ,ほとんどすべての行動科学の領域において用いられる。たとえば,サイバネティックスは,人間頭脳の諸機能や人間活動の制御(アシュビー),人間組織の問題(サイモン),人間行動の予測と構造の問題(ミラー)などに用いられている。情報理論は,人間の知覚過程の分析(アトニーヴ)・パタン情報の処理の問題(ガーナー)・概念学習の分析(ポスナー)などに用いられている。また,ゲーム理論は,人間の経済行動の分析にはもちろんのこと,外交政策・軍事戦略・労使交渉・チェスなど,広く実際問題におけるモデル化の手段として用いられている。さらにシミュレーションは,他の学問領域と同じように,行動科学の諸領域でも広く利用されている。しかも,最近では,モデルづくりという基本的な目的のほかに,情報の収集・検索・変形(電子計算機による言語の分析・自動翻訳・ドキュメンテーション),技術訓練(航空機の操縦・防空システム),教育(プログラム学習・授業研究)など実践面にも適用されている。最後に,行動科学における電子計算機の利用を忘れてはならない。行動料学では,電子計算機は,調査・実験のデータ処理(演算能力の利用)のほかに,人間の精神過程(記憶や思考,さらに人格)の理論化のためのモデルとしても利用されている。この方面の基礎となっている考え方は,人間の頭脳が,機能的には電子計算機とほぼ同じように,制御とコミュニケーションのシステムであり,しかもこのシステムは数学的に記述することができるというものである。
〔参考文献〕ベレルソン編,佐々木徹郎訳『行動科学入門』1962,誠信書房
北川敏男編『情報科学講座』1966,共立出版
田中靖政『行動科学』1969,筑摩書房