●鉱業(中国) こうぎょう
アジア 中華人民共和国 AD
中国は,世界で今までに知られている約140種の有用鉱産資源のすべてが存在し,なかでも石炭・鉄・石油など17種類の主要鉱物の確定埋蔵量は世界でも上位にあるといわれるほどの資源大国である(中華人民共和国人民教育出版社『中国・その国土と人々』1980,帝国書院)。しかし,本格的な鉱産資源開発は中華人民共和国誕生後のことであり,1953年の第1次五カ年計画によって,重工業の建設とエネルギー資源の開発が促進されたのである。【石炭】世界の石炭の生産は,アメリカ・ソ連・中国の3国で全生産量の約64%を占めている。1980年の中国の生産量はアメリカについで2位であった。炭田は華北・東北地方のフーシュン(撫順)・フーシン(阜新)・カイロワン(カイロワン※注1※)など古くから知られるもののほか,シャンシー(山西)・シェンシー(陝西)・スーチョワン(四川)・チャンスー(江蘇)・シャントン(山東)・アンホイ(安徽)などの省にも多い。なかでもシュイチョウ(徐州)を中心とした地域は,ホワイペイ(淮北)・ホワイナン(淮南)・シュイチョウ(徐州)の年生産量1,000万t以上の大炭鉱をもつ炭田地帯である。シャンシー(山西)省も,中国では「石炭の海」と称される地域で,タートン(大同)・ヤンチュワン(陽泉)の大炭田がある。チャンシー(江西)省ピンシャン(萍郷)・ホーナン(河南)省ピンチンシャン(平頂山)も有名である。
【鉄鉱】世界における生産高は第5位である(1981)。大きな鉄山はリャオニン(遼寧)省アンシャン(鞍山)・ペンシー(本渓),ホーペイ(河北)省ロンイエン(龍烟)・チェンアン(遷安)・ツーシャン(磁山),アンホイ(安徽)省マーアンシャン(馬鞍山),フーペイ(湖北)省ターイエ(大治),ネイモンクー(内豪古)自治区パインオボ(白雲鄂博),カントン(広東)州ハイナン(海南),スーチョワン(四川)省パンチーホウ(攀枝花)などである。中国の鉄鉱石のほとんどは,鉄の含有量30%前後の貧鉱であるが,ハイナン(海南)は富鉱を産出する。これらのうちのいくつかの鉄山は,炭田と結びついて鉄鋼コンビナートを形成している。たとえば,タートン(大同)の石炭とロンイエン(龍烟)の鉄は,パオトウ(包頭)の鉄鋼コンビナートを,ターイエ(大治)の鉄とピンシャン(萍郷)の石炭はウーハン(武漢)鉄鋼コンビナートを,フーシュン(撫順)・フーシン(阜新)の石炭とアンシャン(鞍山)・ペンシー(本渓)の鉄は中国最大のアンシャン(鞍山)鉄鋼コンビナートを形成した。このほかにも近くの鉱産資源を利用し,シャンハイ(上海)・マーアンシャン(馬鞍山)・チョンチン(重慶)にも鉄鋼基地が建設されている。
【石油・天然ガス】中国は,インドネシア・ブルネイとともに,西アジアを除いたアジア地域では屈指の産油国である。1981年の産油量では世界6位で,開発の新しいことが特徴である。1960年代に入ってから,東北部のターチン(大慶)油田の発見を契機として飛躍的に生産量が伸び,世界の主要産油国に加えられるようになった。中国では,李四光の生み出した地質力学と呼ばれる理論と方法により,多くの油田が発見された。ターチン(大慶)もその一つで,試掘井から原油が噴出した1959年9月が新中国建国10周年の前夜であったことから,ターチン(大慶)と名づけられた。そのほかのおもな油田は,内陸部のユイメン(玉門)・カラマイー(克拉馬依)・ロンフー(冷湖)・シェンシー(陝西)省イェンチャン(延長)・華北のホワペイ(華北)・ホーナン(河南)省ナンヤン(南陽)などがあり,とくにテンチン(天津)南東部のションリー(勝利)・ターカン(大港)と渤海湾沖合油田は埋蔵量や交通の便などから期待が大きい。南部にもカントン(広東)省コワンチョウ(広州)西南地区・チュー(珠)江河口付近・ハイナン(海南)島周辺にも油田がある。渤海湾では日中共同石油開発が行われ,日中石油開発会社が1982年(昭和57)来,すでに6本の試掘に成功しており,近い将来,日本に対する有力な石油供給源になるはずである。このプロジェクトの探鉱費は日本,開発費は日本と中国が49:51の割で負担しており,アラビアンライトより軽質で硫黄分の少ない良質の原油が得られている。日本側は原油生産量の42.52%を15年間にわたって引き取る権利を有している。この油田の商業生産が開始されれば,日量20万バーレルが輸入できる見込みである。天然ガスはチョンチン(重慶)・イーピン(宜賓)を中心として,スーチョワン(四川)盆地で産出する。1982年の生産量は119億3,000立方mであり,ほとんど省内で燃料・工業用原料として使用される。そのほか,石油の代替エネルギーとして注目されるオイルシェールも産し,リャオニン(遼寧)省のフーシュン(撫順)やカントン(広東)州のマオミン(茂名)にはオイルシェールからの製油工場がある。豊富な石油資源を利用した石油化学工業基地は,ヘイロンチャン(黒龍江)省ターチン(大慶)・カンスー(甘粛)省ランチョウ(蘭州)・シンチャンウイグル(新疆維吾爾)自治区ウルムチ(烏魯木斉)のほか,ペキン(北京)・シャンハイ(上海)・テンチン(天津)にもある。
【銅】銅の生産量はあまり多くなく年産20万tほどである。チャンシー(江西)省トーシン(徳興)県には大銅床があり,金・銀・モリブデンなども同時に産する。そのほか,チベット(西蔵)自治区・フーペイ(湖北)省東部などでも大きな銅鉱床が発見された。カンスー(甘粛)省のパイイン(白銀)(銅)とチンチョワン(金川)(多金属鉱床)には冶金工業基地があり,アンホイ(安徽)省ワンナン(皖南)には銅の非鉄鉱物基地がある。
【タングステン】中国は世界一の生産国である。とくに,チャンシー(江西)省南部・フーナン(湖南)省南部・カントン(広東)省北部の一帯はタングステンの大鉱床である。この地域は,かつて大規模なマグマの活動が行われた地域で,広範囲にわたり火成岩が形成された。当時のマグマのなかにタングステンが含まれていたといわれる。なお,チャンシー(江西)省南部のカンナン(カンナン※注2※)には非鉄金属鉱物基地がある。
【鉛・亜鉛】中国のおもに西部と西南部に産する。ユンナン(雲南)省ランピン(蘭坪)・チンハイ(青海)省ツァイダム(柴達木)盆地のシーテーシャン(錫鉄山)が有名な鉱山である。鉛の生産高は1980年度,世界8位であった。
【その他の鉱産資源】上記以外のおもな鉱産資源名と生産高の順位をあげると,錫6位(1979),マンガン7位(1981),水銀5位(1981),アンチモニー3位(1981),モリブデン5位(1981),硫黄6位(1981),燐鉱石4位(1981),塩4位(1981)であり,このほかにも,アグネサイト・クローム・ボーキサイト・石こう・石綿・ほう砂・石灰・雲母・石英などの鉱産物も産出する。中国におけるエネルギー資源と鉄の豊富さは米ソに匹敵し,世界にもあまり例のないほどである。こうした資源の豊富さが1949〜78年の約30年間に,中国の重工業生産を91倍に高めたといえる。また,中国の鉱産資源のもう一つの特色として,レアメタル(希少金属)を多く産出することがあげられる。レアメタルとはニッケル・コバルト・クローム・マンガンなどの金属で,最近はこれらの金属の希少性から,石油と同様,国家備蓄を強化しようとする動きがある。先進工業国の大半は,これらレアメタルを2カ月〜1年分以上の量を備蓄しているといわれるが,日本は経費上の問題で実現していない。なお,中国の鉱産資源開発は,石油を例にとれば,「10の大慶油田」を開発し,1985年までに2億tの生産を予定していたが,開発は遅れぎみであり,各地で外国との共同による鉱産資源開発が行われている。石油は,先の渤海湾の例のほか,珠江沖合を中心とする南シナ海の石油開発にも外国企業が参加している。この計画では,1982年2月に中国海洋石油総公司によって入札が行われ,ブリティッシュ=ペトロリウム(BP)を中心とする多国籍企業が落札した。そのほかにも,1983年11月までに16の外国企業集団との契約・調印が行われた。日本が中国から輸入する石炭は約200万tで,全輸入量の約3%にあたるが,1982年9月の両国間合意で,1983年450万t,1984年600万t,1985年700〜800万tと定められた。原油の輸入量は約1億kl,4.5%(1981),ボーキサイトの輸入量は約4万t,1%(1981)である。
![]()