●甲賀三郎 こうがさぶろう
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諏訪明神の本地として語られた語り物の主人公。『神道集』に記され,浄瑠璃(じょうるり)にも語られる。信州の諸本の系統と,浄瑠璃の系統とに大別される。主人公の名も前者では頼方または諏方,後者では甲賀三郎兼家または望月三郎兼家とされ,そのほかの登場人物・地下往来の出口入口・遍歴する国々の数なども両系統で異なっている。前者に例をとると梗概は次のようである。安寧天皇五代の孫甲賀権頭諏胤の末子三郎諏方は,伊吹山で狩の折失迹した妻春日姫を探して日本国六十余州の嶽々を巡歴し,信州蓼科嶽(たてしなだけ)の人穴で彼女を発見した。しかし兄の奸計で地上に帰る手段を失い,地下の諸国を巡遊し,維縵(ゆいまん)国の国主の娘を娶る。13年ののちに日本帰国を思い立ち,1,000日をへて信州浅間嶽近くに蛇体となって帰還した。神々の教示によって人体にもどり,ついに春日姫に出会い,諏訪明神と祭られたという。三郎の名は末子が異常な呪的性能を持つという観想によるものであろう。信州滋野(しげの)氏など諏訪神社の神人が語り広めた伝承と考えられる。
〔参考文献〕柳田國男「甲賀三郎の物語」『物語と語り物』1946,(『定本柳田國男集』7,筑摩書房)
福田晃『神道集説話の成立』1984,三弥井書店