●コイネ
ヨーロッパ ギリシャ共和国 AD
前4世紀後半ごろに,一種の標準語として通用していたアッティカ方言を基礎として,多くのイオニア方言の要素を混合して成立したギリシア共通語。前5世紀以降にみられた方言混合に加え,前4世紀から各ポリスの独自性がしだいに失われたこと,閉鎖的なポリスの枠を超えた政治的な統一が進行したことなどが相互に影響し合って,一つの共通語をつくり出す素地ができた。ギリシアの各地で生活し,多くの方言を経験したクセノフォンは,コイネによって著作した最初の代表的な人であるといわれている。従来の狭い都市国家を超えて全世界を共通の祖国とする精神構造,ヘレニズム的コスモポリタニズムは,方言の差を超えたコイネと一致する。コイネは,アレクサンドロスの帝国とその後継者が公用語として採用したことによって,急速に普及した。のちには,古代世界の西半分で通用したラテン語に対して,東半分においてはコイネが支配的になり,ビザンツ帝国によって継承され,今日のギリシア語の母体となった。ギリシア語訳旧約聖書も新約聖書のギリシア語も,コイネである。