●権力 けんりょく
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なんらかの方法で,人が他人を自己の意思に従わせて行動させ,または行動させぬとき,人は権力をもつという。フリードリヒによれば,これは権力を人が把握することのできる一つの物として考えるもので,17世紀以来の古典的力学の影響を受けた実体的権力観である。ところが,ラズウェルは,この実体を社会的諸価値とみることによって,権力観転換の道を開いた。彼は,支配というものは多様な価値を追求する人々に対して,これらの価値を賦与したり剥奪したりすることによって可能となると考え,このような,人の他の人に対するコントロールを勢力(影響力)と呼び,そのうち,重大な価値剥奪を伴うものを権力と呼んだ。ラズウェルの議論は実体的権力観から関係的権力観への架橋者となった。多様な価値観をもつ人々が,それぞれの価値観に従って自発的に服従するとき,彼の服従が支配者をつくるのである。このような見解を権力関係説という。関係説は権力をミクロ的にみることを可能にしたが,マクロ的には必ずしも有効でないこともある。関係説者としてはヘラーが有名である。フリードリヒは両説を折衷して,権力とは,指導者と被指導者とが,なんらかの共通の目的の実現のために,一部は同意により,一部は強制によって,相互に結びつけられている人間関係である,とする。この説の支持者は多いが,他方で,この説は,権力の実体と作用を混同しているという批判がある。かくて,権力をもって,その意思に反しての,相手の身心への強制力と,相手の自発的服従への同意を引き出し獲得する能力としての権威という,二つの力の合成物であるとする説もある。これは新しい実体説である。