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●権利章典 けんりしょうてん

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 一般的には憲法における人民の基本的人権の保障に関する諸規定をさし,近代の成文憲法にはいずれにも原則として含まれているものである(たとえば日本国憲法の第3章やアメリカ合衆国憲法修正10カ条など)。しかしふつうはイギリスの「権利章典」をさす。イギリスの権利章典とは,1689年12月議会において制定された「臣民の権利および自由を宣言し,王位継承を定める法律」の通称であり,マグナ=カルタおよび権利請願と並んでイギリスの最も重要な憲法的文書である。

【成立】1688年12月,名誉革命がおこり,国王ジェームズ二世はフランスに逃亡した。翌年1月,事態収拾のため召集された仮議会は憲法的諸原則を「権利宣言」としてまとめ,これの承認を条件としてオレンジ公ならびに公妃(ジェームス二世の娘)をイギリスの共同君主とすることを決議し,両人はこれを承認したため,国王ウィリアム三世ならびに女王メアリ二世として即位した。このような名誉革命の善後措置に法的効力を与えるために,「権利宣言」に若干の補足を行って法律化したものが「権利章典」である。

【内容】先王ジェームズ二世の行った不法行為の指摘から始まり,それらが将来の君主たちによって繰り返されないよう次のような要旨で13項目が列挙される。すなわち[1]国王は議会の承認なしに法律の適用または執行を停止する権限をもたない。[2]国王は法律の適用または執行を免除する権限をもたない。[3]教会関係の事件に関して,かつて存在した宗務官裁判所を設立する授権状やその他これに類するいっさいの授権状および裁判所は違法である。[4]国王は議会の承認なしに国王の使用に供するための金銭の徴収はできない。[5]臣民には請願権がある。[6]国王は議会の承認なしに平時において常備軍を維持することはできない。[7]新教徒である臣民は自衛のための武器をもつことができる。[8]議会の議員の選挙は自由でなければならない。[9]議会における言論あるいは議事手続きは院外で問責されない。[10]過大な保釈金・過大な罰金および残忍な刑罰を求めてはならない。[11]陪審員は正当な方法で選ばれなければならない。[12]有罪判決の前にその者に課せられるべき罰金または没収物について約束することは違法であり無効である。[13]苦情救済と法律の修正・強化・保全のため議会はしばしば開かれなければならない。なおこれら13項目にまとめられたイギリス人の権利と自由の根拠として,そこでは〈その一つ一つが全部,この王国の人民の真の,古来から伝えられた,疑う余地のない〉ものとして理解されなければならないと述べられている。その他の「権利章典」はウィリアムならびにメアリがイギリスの国王および女王であることを明言すると同時に王位継承問題についてふれ,当人が新教徒であることを前提条件としての継承の順位を定めている。さらにそれは,従来法によって忠誠の宣誓をしなければならない者に対しての新しい宣誓文を定めている。

【意義】「権利章典」は,1689年の軍罰法および寛容法,1694年の三年会期法,1701年の王位継承法などとともに,名誉革命後のイギリスの政治体制の骨格を成す法律である。そこには,“古来から伝えられた”権利と自由の回復という政治構造の連続面が前面に出ているものの,国王の法律適用停止権および法律適用免除権の否定など議会による王権の制限の強化という断絶面のあることも注意する必要がある。それは1世紀に近い国王と議会のあいだの対立抗争の結末を示すものである。

〔参考文献〕高木八尺他編『人権宣言集』1957,岩波書店

浜林正夫『イギリス名誉革命史』1981〜83,未来社