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●現地調査 げんちちょうさ

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 歴史研究における調査は,現地調査と文書館や図書館・資料館などの史料保存機関の調査とに大きく分けられる。現地調査のおもな内容として,[1]文献史料調査,[2]聞き取り調査,[3]石造物・道具・建築などの物資料や景観の調査があげられる。

【現地の文献史料調査】ある特定の地域史なり,特定の課題に関する研究において,文献史料収集をする場合に,現地調査がなされる。とくに新しい時代を対象とする場合ほど,現地調査の比重が大きくなる。というのは,古い時代,ほぼ中世ぐらいまでは残存史料も少なく,そのほとんどは所在がつきとめられ,史料としての重要性も認識され,多くは翻刻され,現物も史料保存機関に収蔵されているからである。しかし新しい時代の史料は量的にも多く,一部のとくに重要とされた史料が史料保存機関にあるだけである。したがって現地調査によって史料を入手する場合が多い。もちろん,すでに史料所在調査が終了し,目録も作成された上で現地保存されている史料から,研究課題に必要なものを探すときもある。しかしながら,地域の旧家であるとか,ある事柄の当事者あるいは関係者であるとかの理由で見当をつけて,まず史料をもっているかどうかの調査を,個人の家や団体に対して行う史料所在調査から出発することもある。その上で,みつけた史料を整理し研究に使うわけである。

【史料現地調査と史料保存】現地で新しい史料を発見する調査は,史料保存にとっても重要な意味をもっている。新しい時代,とくに戦後史などの現代史の史料は,歴史の資料であるという認識を所有者自体がもたない場合もあって,なにかの機会に処分されることがあるからである。したがって,現在作成されている文書などのなかから歴史研究に役立つ資料を選び出し保存するとともに,現地に残されている史料をみつけ出し,整理し,保存体制を確立することが大切である。

【現地の聞き取り調査】次に現地調査で大きな意味をもつのは,談話取材を行う聞き取りである。これが可能なのは,当事者・関係者が生きている現代史の場合だけである。聞き取りはすでに文献史料が失われた場合に,その代わりをしたり文献史料で不十分な点を補ったり,記録などの史料の誤りを正したりするなどの重要な意義をもっている。また話を聞くことで,当時の感じなどをつかみ,文献史料解釈を深めることができる。しかしながら,人の記憶に頼るわけであり,時間など事実の誤りや混同がありがちである。また一面的な印象のみ残っている場合もある。さらに意識的に事実を隠したり,自己弁護のためや自分の功績を誇大宣伝するために,事実をゆがめて話すこともよくある。したがって他の文献史料に当たったり,他の人の談話とつき合わせたりなどの,厳密な史料批判が必要である。聞き取り調査の過程で,文献史料を所蔵していることがわかることもよくあるので,両者の調査は密接な関係をもっているといえよう。

【物資料や景観の現地調査】文献ではなく,物資料を研究資料とする考古学や民俗学では,現地の発掘や現地の民家調査などがおもな調査となっている。また文献史学のほうでも,物資料を補助的史料として利用する場合が多くなっている。とくに木簡や石造物に彫られた碑文などの金石文は,文書などと同じような意味がある。しかも残存文献史料が少ない前近代史研究では,この調査の意義は大きい。さらに現地の耕地や道の様子,および地形などを観察し,そこから古い時代の状態を復元することも行われている。これも前近代史研究でよく行われているが,近現代史でも町並みや近代洋風建築群の調査という形でなされている。これら新しい史料の発掘・利用のみでなく,文献史料の解釈を深め,正確にするためにも現地を実際にみることが重要である。というのは,文献を読んでいるだけでは思わぬ誤りをすることがあるからである。