●原子力管理 げんしりょくかんり
AD
原子力または核エネルギーを用いた核兵器は,大きな破壊力をもつため,原子力の研究・開発・利用を管理すること。第二次世界大戦後,以前の通常兵器に比べて,けた違いの破壊力をもつ核兵器の処理をするということは,軍縮交渉の主要な課題であった。国際連合(国連)総会は1946年1月原子力が平和目的だけに使われるように国連原子力委員会の設置を決めた。同年6月に,アメリカが同委員会に提出したバルーク(Baruch)案は,大国の拒否権を認めない国際原子力開発機関を設けて,核兵器の研究・材料などをすべて独占的に管理させようというものであったが,ソ連の反対のため解決できず,この委員会は1949年7月に大国間の協定の基礎ができるまで活動を停止することになった。1953年12月末に,アメリカ大統領アイゼンハウアーは,国際連合に,原子力の平和利用のための国際原子力機関の設置を提案した。ソ連も,核軍縮と切り離して,平和利用に限ることでこれに同意し,1957年国際原子力機関(IAEA:International Atomic EnerGY AGencY)が設置された。【平和利用と軍事利用】原子力管理は,主として原子力の平和利用を対象にするものであるが,原子力については,平和利用と軍事利用とは表裏一体という面もあり,切り離して考えることはできない。それは,いずれの場合にも,その材料としてウランU-235やプルトニウムPu-239のような核分裂性物質を用いるからである。U-235は,天然ウランのなかに0.72%含まれている。カナダの重水炉(CANDU炉)のように,天然ウランをそのまま核燃料に用いる場合もあるが,多くの場合は,U-235の濃度を高めた濃縮ウランを用いる。軽水炉の場合には約3%に濃縮したウランを用いるが,原子炉の種類によっては,93%に濃縮したウランを用いるものもある。ウラン濃縮の工程は,原子炉に用いるものも,核兵器に用いるものも同じであるから,原子炉の核燃料用のウラン濃縮技術をもつ国は,核兵器のための濃縮技術をももつことになり,このことは原子力管理の上から大きな問題になる。もう一つの核分裂性物質であるプルトニウムPu-239の場合には問題はさらに深刻である。軽水炉のなかの核燃料が燃焼すると,核燃料のなかにあるU-238に中性子が吸収されるとPu-239に変わる。電気出力100万キロワットの原子力発電所を1年間運転すると,200kGのPu-239を生じる。これを用いれば,長崎に投下された原爆を10発製造することができる。使用済核燃料をそのままにしておけば,原爆の材料にはならないが,再処理してPu-239を取り出せば,核兵器の材料にすることができる。このプルトニウムには,Pu-240も含まれているので,純粋なPu-239だけの場合に比べて効率は悪いが核兵器の材料として使える。プルトニウムを使用済核燃料のウランと分離をするのは,化学操作で行うことができるので,U-235を濃縮するよりもはるかに容易であるため,ある程度の工業技術のレベルがある国ならば容易に行うことができる。このような理由で,プルトニウムについては,国際的にも国のレベルでも,厳重な管理が必要である。
【核実験禁止条約】核爆発の実験を行うのを核実験という。1945年5月16日にアメリカがニューメキシコ州のアラマゴードで最初の原子爆弾の爆発実験を行って以来,1983年末までに約1,400回の核実験が行われてきた。1962年のキューバ=ミサイル危機で,核戦争が回避されたあと,米ソ両国のあいだで折衝が進められ,1963年,米・英・ソ連は部分的核実験停止条約に調印した。この条約は,宇宙空間・大気圏内・水中での核実験を禁止したものであるが,地下核実験の禁止はしていない。その上,中国とフランスはこの条約に加盟していないため,1963年以降も大気圏内核実験を行ってきた。それでも,これ以後は,大気圏内の放射能は減少してきたが,地下核実験により核兵器開発は進められてきた。その後,1974年7月3日に,「地下核兵器実験制限条約」が米ソのあいだで合意された。これは爆発威力150kt以上の地下実験を禁止するものである。また1976年5月28日「平和目的地下核爆発制限条約」も合意されたが,これは平和目的という名の地下実験も禁止している。1974年にインドは平和目的ということで地下実験を行っているが,核実験については,平和目的と軍事目的の区別をすることはできない。核実験の探知は地震現象によって行われるが,現在では,19kt以上のものは探知可能で,固い岩石のなかで行われたものについては,1ktのものでさえ探知可能とされている。150ktというのはこれに比べてあまりにも大きすぎる。したがって,1977年から,米・英・ソ連三国のあいだで「包括的核兵器実験禁止条約」の検討がなされているが,検証問題,中国・フランスの参加などの問題に関し難航している。
【核拡散防止条約】「核兵器の不拡散に関する条約」(核拡散防止条約)は,核兵器保有国に対して,核兵器や核爆発装置を誰にも渡さないことを義務づけ,核兵器をもたない国に対しては,核兵器や核爆発装置を受け取ったり,製造したり,取得しないように義務づけている。その上,核兵器保有国は,核兵器をもたない国が核兵器や核爆発装置をつくったり取得したりするのを,奨励したり勧誘したりすることを禁じている。核兵器保有国同士のあいだで,核兵器そのもののやりとりを禁じているが,核軍備の分野で協力することは禁じていない。この条約は,1968年に署名され1970年に発効したが,中国およびフランスの二つの核保有国が加盟してない上に,インド・イスラエル・南アフリカなど,核爆発装置または核兵器をもっているか,近い将来にもつと考えられる国も加盟していないので,実効の少ないものになっている。核拡散防止条約の締結国は,1983年末で121カ国で,日本は1970年に署名し,この条約を遵守する限り核兵器を製造・保有することは禁じられる。
【国際原子力機関】国際原子力機関はアイゼンハウアー米大統領の提唱により,1957年7月にウィーンに本部を置いて発足した国際機関であって,原子力を全世界の平和・保健および繁栄に貢献させるように努力し,また可能な限り,軍事目的に利用されないよう保障することを目的とするものである。IAEAの業務は多岐にわたっているが,とくに重要なのは,保障措置業務と技術援助業務である。保障措置業務は,IAEA加盟国の原子力機関が,平和利用だけに限られるように保障し,核分裂性物質などの軍事利用防止のための監視システムが,IAEAの国際査察官を加盟各国に派遣するなどしている。ただし,査察を受けるのは,核拡散防止条約の加盟国の原子力平和利用施設に限られていて,非加盟国の場合には,独自の開発計画については国際的監視の目はとどかない。この対象となる施設としては,大規模なウラン濃縮工場・核燃料再処理工場・プルトニウム燃料製造工場がある。日本は,この機関に加盟していて,この保障措置による査察を受けている。
【国際核燃料サイクル評価】原子力の平和利用を広め,核兵器拡散の危険性を最小にするための研究で,1977年から議論が始められ,1980年1月27日に終了し最終報告が発表された。会議の討議は,ウラン採掘・ウラン濃縮・高速増殖炉・使用済核燃料貯蔵・使用済核燃料再処理・廃棄物処理など八つの作業部会を置いて検討したが,核拡散のおそれのない燃料サイクルなどINFCEの検討すべき間題については,みるべき結論を得ることはできなかった。問題の中心は,現在の核燃料サイクルの結果生産されるプルトニウムをどうすれば兵器に転用されないようにするかということであるが,これについては,使用済核燃料を再処理せずに使い棄てにして貯蔵するという案も考えられ,これに適した原子炉などいろいろなアイデアが提案されたが,結局のところ基本的に新しいものは何も出なかった。