●源氏物語絵巻 げんじものがたりえまき
アジア 日本 AD
平安時代後期の絵巻物。白河・鳥羽上皇の院政期(1120〜1140ごろ)に,院や女院を中心とする入念な企画として制作されたものと思われ,『源氏物語』54帖の各帖から1場面ないし3場面を抜き出して絵画化し,対応する本文の一節を美しい料紙に書写した詞書を添える。当初は80〜90場面が10〜12巻くらいの絵巻に構成されたと推定されるが,現在では19段の画面と20段の詞書が徳川黎明会と五島美術館とに分蔵されるほか,詞書の断簡8種,絵の断簡1種が伝わるにすぎない。詞書の書風が5種類ほどに分類され,画面相互の間にも表現の相違を指摘できるので,院政期を代表する複数の宮廷画家と書家とが,物語の各部分を分担制作したことがわかる。いずれも料紙の上にまず自由な墨線で構図を下描きしたのち,色鮮かな岩絵具で全面を厚く塗りつめ,しだいに細部の図様を整えながら密度ある画面に仕上げてゆく「つくり絵」の手法によっている。画中の人物は「引目鈎鼻」と通称される類型化された顔容表現をとるが,緻密な画面構成と色彩効果とによって,各場面の情趣と人物の心理とが巧みに造型化され,王朝物語の世界を後代に伝えてくれる。
![]()