●言語発達 げんごはったつ
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子供が誕生後,言語に接してから,肉体の成長に伴ってどのように自己の言語を発達させていくかということ,およびその発達過程を言語発達という。【言語発達研究の二方向】言語発達の研究には,言語構造の体系化の過程を研究する方向と,精神発達と言語習得との関連を研究する方向とがある。前者は,従来から言語学や国語学が対象としてきたもので,言語の音韻面の習得,語彙面の習得,文法面の習得について研究する。後者は,学習心理学や認知心理学が研究対象としてきたものであり,言語現象の背後にある認知の発達を,言語機能と関係づけて研究するものである。言語心理学は,言語構造化の過程を対象としていたが,しだいに,言語認知を問題とする方向に変わってきている。生成文法論の影響によって,ピアジェの学習説に対して,正反対の言語能力の生得説が提出され,人間の言語発達に関する根本的な問いかけがなされた。今や言語発達の研究は,言語学や心理学の課題を超えて,幼児言語学という一個独立の学問領域へ展開しようとしている。
【言語形成期】言語形成期とは,ある個人の言語が発達し,定着するまでの時期であり,3歳から12,3歳まで,すなわち幼稚園就学園期から小学校卒業期までをいう。この期間には,肉体的成長に伴って,[1]幼児音が消え,[2]標準音を習得し,[3]基本語彙の習得にもとづいて,意欲的に語彙を増やし,[4]文法体系を確立した上で,諸種の表現に親しみ,国語人としての教養を身につける。言語形成期に,ずっと同一居住地に生活すれば,人はその居住地の言語文化を,体ごと習得する。そののちに他地へ移住しても,もはや移住先の言語を習得することが容易でなくなる。言語形成期にどこで生活するかということが,宿命的に人間の言語を規定する。言語形成期は,方言や共通語の習得の問題,2(多)言語併用や外国語教育の問題を考える上で,深く考慮すべき重要な意味をもつ。
【調音の発達】新生児の言語は,まず産声から始まる。しばらくして,泣き声にリズミカルな快さが出てくる。1,2カ月もたつと,泣き声のほかに喃語というひとりごとを発するようになる。喃語は,言語音の発声活動の準備活動における感情の表出音である。6カ月を過ぎると,喃語期から模倣期に進む。他者の刺激に応じて答える作用は,言語の本性としての社会的機能を体験したことを意味する。1歳半から2歳になると,物の名を認識して発音しうるようになる。2歳半は,一つの転機である。これを過ぎると,急速に国語音の体系が整い始め,満3歳には,母国語の音節体系がほとんど完成する。ただし,歯・舌・咽喉などの調音器官や運動神経の未成熟が原因で,ラ行音節とダ行音節との交替(ラジオ/ダジオ),サ行音節とシャ行音節との交替(サカナ/シャカナ)などの幼児音が注目される。幼児の国語音が,成人のそれと同じ状況にいたるのは,満7歳から10歳にかけてである。
【語彙の発達】多くの調査によると,語彙の発達は,1歳半で約100,2歳で約300,3歳で約1,000,4歳で約1,600,5歳で約2,200である。3歳児は,日常生活に支障のないだけの基本的な語彙を習得し,これらを組み合わせて自由な会話を楽しむ。いわゆる幼児語は,成人語の発音を模倣することの困難な1歳前期に多用される。たとえば犬がワンワン,水がブー,自動車がブーブー,食物がマンマ,仏様がノンノンなどである。幼児語の多くは,満2歳に達するころに,かなりのものが成人語と交替する。
【文法の発達】生後10カ月から1歳6カ月のあいだに,いわゆる一語文が表れる。以後、二語文以上の片言的な発話がつづく。年齢が大きくなるにつれて文の長さも増大する。言語発達の研究は,新しく,コミュニケーション行為の習得装置を記述する方向に進んできている。言語習得能力の構造化が,世界諸言語についてさかんに試みられており,その研究報告には注目すべきものが多い。