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●元曲選 げんきょくせん

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 またの名を『元人百種曲』という。中国元代に盛んであった演劇,元曲(元の雑劇ともいう)の脚本100篇を載せ,上演する機会が乏しくなった元曲を文学作品として鑑賞する側面が濃厚な本で,1616年(万暦43)に刊行された。編集者は明の臧懋循(そうぼうじゅん),字は晉叔,1580年(万暦8)の進士。臧氏の家蔵の雑劇テキストと友人劉承禧に借りた宮廷楽部秘蔵の200種の複写に校訂を加え100篇を選ぶ。編者の意図は,明代の戯曲の南戯(南曲ともいう)が華麗な歌詞と複雑化した筋立てや演出に熱中することへの反発から,元の雑劇の素朴なおもしろさを主張することにある。この時期には,元曲の選本が相次いで刊行されているが,これは南戯のマンネリズムを救う警告でもあった。『元曲選』がほかの元曲の選本を圧倒している理由には,100篇の脚本は諸選本中では最も数が多く,読みやすく,曲や白(せりふ)ともに整理が行き届いている,などがあげられる。批難としては,名作をほとんど載せてはいるが駄作も混じっている,旧来の脚本の字句に手を加え過ぎている,などがあるが,元曲研究のおもな資料としてよりどころになっている。