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●ゲシュタルト心理学 ゲシュタルトしんりがく

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 ゲシュタルトは姿・形・現象・状態などを意味するドイツ語で,英語ではshape, form, confiGuration,仏語でforme,日本語で形態などのことばが当てられ,わが国では形態心理学とも呼ばれたが,これらのどれもがドイツ語のゲシュタルトのもつ意味を十分に表しえないことから,現在では原語のままゲシュタルト心理学とすることが世界的に行われている。

【成立の背景】19世紀末から今世紀にかけて心理学界の主潮となっていたのは,内容主義・要素主義・構成主義心理学と呼ばれるヴントを中心とする心理学であった。心理学の研究対象は意識であり,内観法によって,正常な成人の意識“内容”を“要素”に分析して刺激条件との対応関係を明らかにし,そのようにして明らかになった要素の特質や要素間の関係から意識内容を再“構成”するというのがヴントの考え方であった。このような心理学界の主潮に抗して,ゲシュタルト心理学成立の基盤となったのは,作用心理学,形態質の考え方であり,実験現象学も成立に大きく寄与した。ブレンターノ(1874)は,心理学の研究対象は意識の内容ではなく作用であり,作用はつねに働きかける対象を含んでいることを強調し,これを指向的内在と呼んで作用心理学を提唱した。エーレンフェルス(1890)は,曲を移調してもメロディーは変わらないように,全体にはその構成要素が変化してもその特質が保持される全体規定性と移調可能性という,要素にはない形態質(Gestaltqualitat)が加わるとした。実験現象学と呼ばれるD.カッツの研究(1911)は,物理的条件と感覚との関係を中心とした従来の色彩研究に対して,日常経験される全体としての色の現れ方に着目し,色を表面色,空間色,面色などに分類するものであり,ルビン(1915)は,視野内に異質の領域があるとき,注意を向けると否とにかかわらず,まとまりのある形としてみえる領域とその他の領域とに分かれるとし,前者を図(fiGure),後者を地(Ground)と呼んだ。

【成立と発展】1912年フランクフルト大学でケーラー・コフカとともに運動視の研究を続けていたウェルトハイマーは,ゲシュタルト心理学の出発点とされる画期的な論文を発表した。これは,たとえば暗室内で静止した二つの小光点の点灯時間とその時間間隔を適当に調整すれば一方から他方の光点への運動(光点が移動しないのにみえる運動なので仮現運動という)が観察されるというもので,刺激と感覚とのあいだに1対1の対応関係があるという従来の恒常仮定を否定した。その後この学派の人々は“PsYcholoGische ForschunG”の創刊(1921),アメリカの心理学雑誌への知覚に関する論文の寄稿によるゲシュタルト心理学の紹介(コフカ,1922),ものの図としてのまとまり方を規定するゲシュタルト要因の体系的記述(ウェルトハイマー,1923)など,知覚を中心として学説を展開したが,他方,類人猿の,機械的な試行錯誤ではなく,洞察による問題解決(ケーラー,1917),ゲシュタルト理論の子供の発達への適用(コフカ,1921),のちにこの学派に加わったレビンによる意志や欲求に関する研究(1926)など,心理学の他領域にも研究が進展した。ナチスの迫害のためアメリカに移住したのちも研究は続けられ,『ゲシュタルト心理学の原理』(コフカ,1935)に集大成された。われわれに直接に経験されるのは体制化された全体(orGanized whole)で,全体は要素の連合による機械的結合やそれに形態質が加わったものではないという,ゲシュタルト心理学における要素に対する全体の原初的優位性の主張は今日広く心理学界に受け入れられている。その後ケーラーは場の概念を取り入れ,心理的経験と大脳の過程とが同型的に対応するという心理物理同型説を唱え,レビンは人格や集団力学の研究を進めた。