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●警察制度 けいさつせいど

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【英米警察制度の特質】イギリスの警察は,首都警察たるロンドン警視庁・ロンドン市警察,県警察,特別市警察,組合警察の5種よりなっている。警視庁のみ国家警察で,その警視庁長官は国王が任命し,直接内務大臣の指揮監督に服している。警察職員の任免監督は警視長官にある。他の警察はすべて自治体警察および行政管理委員会による警察管理が,イギリス警察制度の特質といえる。しかし,第二次世界大戦前後から弱小自治体警察の統合,もしくは県警察への吸収,中央政府の自治体警察への調整が始まっている。

 アメリカの警察は,郡市町村警察,州警察,連邦警察の3種よりなる。郡市町村警察はいうまでもなく自治体警察で,一般行政機関がそれぞれの権限で警察行政を行ってきたが,伝統的で小規模な警察機構は広域かつ高度の犯罪捜査や,その他の警察活動にとって不十分なものとなった。州警察はこれらの欠陥を補う形で1945年ごろまでに各州に登場し,州全域に広範な権限を行使して,地方自治による警察管理の伝統を打ち破った。連邦警察は密輸・偽造などの国家的犯罪や,盗難自動車や誘拐など州際でおこる犯罪を扱っている。連邦全域にわたる警察は,司法省所属の連邦捜査局・移民局や大蔵省の秘密勤務部・麻薬局・沿岸警備隊などがこれにあたる。アメリカでは,数万の自治体警察は統合されることなく依然続いているが,都市部の警察においては制度の再検討が加えられている。

【日本の警察制度の沿革】明治維新後,東京府などの新政府直轄地では旧幕時代の町奉行所所属の与力・同心を引き継いで,市中取締役・補亡方などの名称で治安維持にあたらせたが,混乱期の警察組織としては弱体なため,軍務官が管轄する府県藩兵が地方の警備,凶徒の鎮圧など,治安維持の任についた。廃藩置県後,府県藩兵を整理して兵部省が警察権限を失うに伴い,司法省が全国警察権を掌握し,軍政と警察の混同時代に終止符を打った。東京府は府兵に代わって1871年(明治4),邏卒3,000人を常置したが,翌年9月,司法省警保察に移管した(司法と警察との混同時代)。警保助川路利良は,約1年間欧州各国の警察制度を調査研究して1873年9月帰朝し,警察制度に関する建議書を政府に提出。建議にもとづいて1873年11月内務省が設置され,翌年1月全国警察を総摂していた司法省の警保寮を内務省に移管(司法警察と行政警察の分離)し,とくに首都警保のため東京警視庁を設置して,ここに初めて近代的な国家警察制度が発足した。自治体警察の部分を除くと,主としてドイツ・フランスの中央集権的な国家警察の制度を採用したのであって,制度そのものはいったん廃止されていた警視庁が1881年に再置されたさい,内務省から独立して帝都治安を担当する制度となってからのちには大きな変化はみられない。内務省警保寮も一時警保局となったが,東京警視庁の廃止期間中は警視局と改められ,新たに東京府下の警察事務も直管した。この措置は,全国に頻発する騒擾・内乱に対応するもので,警視庁結成の精鋭警察隊を全国に派遣することを可能にさせた。警視庁再置後は再び内務省警保局となって,内務省解体まで全国警察の総元締の役割を果たした。

 地方の警察機構は概ね府県庁内の庶務課に警察掛を置いて,聴訟課管掌事務のうち裁判事務を除く司法警察および囚獄事務と行政警察の事務を管掌していたが,1874年に司法警察規則,1875年に行政警察規則が公布されて,司法・行政の両警察の区別が明確にされ,後者に重点を置く内務省によって府県警察機構も画一的に改められた。1875年警察掛は独立して第四課になり,漸次課長に警部を任じた。1880年第四課は警察本署と改称,翌年府県に警部長を設けて警察本署長とし,国事警察については内務卿の,府県警察については府県知事の直接指揮を受けることとした。しかし1886年,地方官官制の大改正で警察本部と改められ,警部長がその長となり,警部長は職務一切について知事の指揮監督を受けることに改められ,知事の警察事務統轄の権限は終戦まで続いた。1890年,警察本部は警察部となり,長を警察部長と改めた。このようにして近代国家警察の骨格はできあがり,制度として確立した。その後1911年に警視庁に特別高等課が設置され,漸次他府県にも及び,3・15事件のあった1928年(昭和3)には全国一斉に特高警察が設けられ,主として社会主義運動の取り締まりにあたった。地方警察については概ね地方長官に裁量がゆだねられていたが,特高警察については徹底的に内務省警保局による中央統制が貫かれ,第二次世界大戦前と戦中を通じて極右・極左の取締りが一層強化された結果,非民主的な活動も伝えられている。

 第二次世界大戦前は,警察の権限はすべて国家に属し,司法警察および行政警察はおもに内務大臣・府県知事・北海道長官・警視総監ならびに各警察署長を警察官庁として組織し行われてきた。第二次世界大戦後は,これら中央集権的統一的官僚主義的な警察制度の解体を目的として,1947年の警察法(昭和22年法律第196号)が施行され,自治体警察の創設,警察の地方分権化,行政警察の多くを各行政機関の所掌として警察権限の分散化をはかり,公安委員会制度を採用して民主的警察事務の管理をめざした。しかしその結果,全国1,605の市町村に独立の自治体警察が生まれ,国家地方警察はわずかに人口5,000人以下の村落を担当するにすぎず,政治の最高責任者たる内閣総理大臣は,非常事態が発生した場合を除くほか,警察に対してなんら指揮命令権をもたぬこととなったのである。そのために,[1]国家警察と自治体警察がそれぞれ独立して一体性を欠くために,その間隙に乗じて多くの騷擾事件がおこされ,[2]公安委員は空しくその地位を保って無視され,[3]市町村の財政難のため警察活動は著しく制限されるなどの欠陥をたちまち露呈し,旧警察法は1947年12月制定以来,1954年6月新警察法によって全部改正されるまでの6年余のあいだに,実に7回の改正を余儀なくされているのである。

【警察法の概要】新警察法は「民主的理念を基調とする警察の管理と運営」の制度という長所を保持しつつ,「能率的にその任務を遂行するに足る警察の組織」をめざして旧警察法の不備欠陥を是正しようとした。従来の自治体警察と国家警察にかえて,新たに国の警察機関と都道府県の自治体警察とが設置され,それぞれの任務を遂行している。

 (I)国の警察機関:(イ)国家公安委員会内閣総理大臣の所轄のもとに委員長および5人の委員からなる国家公安委員会を設け,国の公安にかかわる警察運営を司り,警察教養・警察通信・犯罪鑑識・犯罪統計および警察装備に関する事項を統轄し,ならびに警察行政に関する調整を行う。委員長は国務大臣をもってあて,委員会を代表し,会務を総理し,会の招集をするが表決権をもたず,出席委員の可否同数の場合に限り,裁決権を有する。委員は任命前5年間に警察,または検察の職務を行う職業的公務員の前歴のない者のうちから,内閣総理大臣が両議院の同意を得て任命。3人以上が同一の政党に所属してはならない。国家公安委員会は,その任務を遂行するため警察庁を管理し,その権限に属する事務に関し,法令の特別の委任にもとづいて,規則を制定することができる。(ロ)警察庁−国家公安委員会の管理のもとに,同委員会の任務を遂行するために法律で定められた事務を司る。警察庁長官は国家公安委員会内閣総理大臣の承認を得て任免し,警察庁の所掌事務について,都道府県警察を指揮監督する。警察庁の内部部局として,長官官房のほか警務・刑事・交通・警備・通信の5局が置かれ,付属機関として警察大学校・科学警察研究所・皇宮警察本部がある。また地方機関として,東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州に管区警察局が置かれ,警察庁所掌事務の一部を分掌する。なおその特殊性のため,管区警察局の管轄から外されている東京都と北海道に警察通信部が置かれている。

 (II)都道府県警察:都道府県には,それぞれ自治体警察である都道府県警察が置かれ,当該都道府県の区域につき,法律で定められた警察の責務に任ずるが,旧警察法下の市町村警察のように完全な地方自治による警察と異なり,広域行政の要請にあうよう定員や内部組織については政令で定める基準に従わなければならない。したがって,都道府県警察は一応自治体警察とみるべきであるが,一定の任務については警察庁長官の指揮監督や,管区警察局長の指示を受けなければならない。また,警視正以上の階級にある警察官の俸給・警察教養施設の維持管理および警察学校における教育訓練に要する経費・警察通信・犯罪鑑識施設の維持管理と,それに要する経費など政令で定めるものについては国が支弁し,その他の経費を都道府県が支弁するが,さらに都道府県負担の経費についても一部を国が補助するなど,これでは完全な自治体警察とは称しにくいが,旧警察法の長所を生かしつつ欠陥を補う制度的工夫が施されていることは事実である。管理機関として,都道府県知事の所轄のもとに都道府県公安委員会が置かれ,任命資格は国家公安委員と同一で,都・道・府および指定県は5人,その他の県は3人の委員で組織する。委員の任命は都道府県議会の同意を得て知事が行う。なお北海道には道公安委員会のほか,4カ所に設けられた方面本部にそれぞれ方面公安委員会が組織される。東京都警察の本部として警視庁,道府県警察の本部として道府県警察本部が置かれ,それぞれ都道府県公安委員会の管理のもとに,都道府県警察の事務を司る。都警察には警視総監を,道府県警察には道府県警察本部長を置く。警視総監は,国家公安委員会が都公安委員会の同意を得た上,内閣総理大臣の承認を得て任免する。警察本部長は,国家公安委員会が道府県公安委員会の同意を得て任免する。都道府県の区域を分かち,市民社会の第一線に立って警察事務を行うため,各地域を管轄する警察を置く。警察署の下部機構として派出所または駐在所を置くことができる。派出所は2人以上の警察官が交代で勤務し,駐在所は住宅が付属して巡査が単独に勤務する。通常派出所は市部に多く,駐在所は農村部に配置されることが多い。

 (III)警察職員:国の警察機関には一般職の国家公務員たる警察職員がおり,都道府県警察には一般職の国家公務員たる警視正以上の階級にある警察官(地方警務官という)と,地方公務員たる都道府県警察職員(地方警察職員という)が勤務している。国の警察職員には,警察官・皇宮護衛官・事務官・技官,その他所要の職員の区別があり,都道府県警察の職員には,警察官・事務吏員・技術吏員・雇傭人の区別がある。警察庁長官を除く警察官の階級は,警視総監・警視監・警視長・警視正・警視・警部・警部補・巡査部長および巡査の順となっている。

〔参考文献〕大霞会編『内務省史』2,1970,地方財務協会

田上穰治『警察法−増補版−』法律学全集12−1,1978,有斐閣