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●景気政策 けいきせいさく

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【景気政策の登場】景気循環は資本主義経済の自己調整運動とも考えられるが,これを放置すると長期的な不況の持続や恐慌,あるいは激しいインフレーションが発生して国民経済秩序を混乱させ,国民生活を破壊し,経済社会体制があやうくなるおそれがある。しかも資本主義経済の発展につれてこの危険が増大する傾向さえみられるようになった。その代表例が1930年代の世界恐慌である。いわゆる“夜警国家”思想のもとに自由放任を理念として出発した資本主義も,今日ではさまざまな面において国家の政策的関与を要求することになった。広い意味で政府の経済政策の課題とされるものは,市場機構の円滑な運行を保障すること,市場経済の欠陥を是正し不備を補足することの二つに大別することができる。後者のなかでもとくに景気変動を緩和し,経済の安定をはかるための政策が景気政策である。これが本格化したのは,1930年代の世界恐慌以後のことであり,これを可能にしたのは有効需要の理論を確立することによって国民経済運営の政策手段を提示したケインズ理論の登場と,それに対応した巨視的国民経済統計資料の整備にあるといえる。ケインズ理論によれば,景気の好し悪しは基本的には国民生産物の生産力と総需要との相対関係に起因し,総需要は政府の政策手段によって操作可能である。たとえば有効需要の主要な独立要因である投資支出は,公定歩合政策を含む金融政策と,公共投資や租税政策を中心とした財政政策によって操作・誘導することができる。また消費需要さえもある程度は租税政策などで動かすことができる。いうまでもなく金融・財政政策の自由裁量的発動を可能にしたのは金本位制度の放棄と管理通貨制度の採用である。

【金融政策】通貨の流通量は購買力を定めるから,通貨流通量の操作は景気政策の有力な手段である。通貨の主要部分は中央銀行が発行する現金通貨と,市中銀行が信用創造によって創出する預金通貨とから成り立っているが,中央銀行は全通貨量を直接・間接にコントロールする手段をもっている。これが金融政策である。金融政策の基本的な手段は,[1]金利政策,[2]公開市場操作,[3]支払準備率操作であるが,日本の場合[4]直接的貸出規制がとられることがある。

 [1]金利政策公定歩合政策とも呼ばれる。中央銀行が公定歩合(市中銀行に対する貸付・手形再割引の基準金利)を上げ下げすることによって,通貨流通量を間接的にコントロールする政策である。日本では近年までは市中銀行の中央銀行に対する依存度が高かったため,とくに景気の引締めに際して即効性を発揮した。[2]公開市場操作(オープン=マーケット=オペレーション)本来は一般の公開市場に対して,中央銀行が政府証券そのほかの有価証券を売買して,通貨量の調整をはかる政策である。日本では公開市場が未発達であるため,市中銀行との直接取引が行われているが,習慣的にこう呼ばれている。[3]支払準備率操作 準備預金制度にもとづく法定準備率を上げ下げすることによって,信用創造の収縮・拡張をはかろうとする政策である。

【財政政策】とくに景気政策としての財政政策は,財政収支の増減をはかることによって直接的に総需要を操作する作用をもっている。元来財政は累進課税制や種々の社会保障的支出によって,景気の“自動安定化装置を組み込んでいる。しかし現代の財政政策はより積極的に政策的裁量によって,不況期には財政投資を中心として財政支出を増やし,また減税などによって総需要を増やして景気の振興をはかる。景気の過熱を防止する場合にはその逆を行う。財政政策は総需要のコントロールの手段として直接的な効果をもつが,財政支出の増大を要する不況時には必要な財源が減少するというジレンマに陥ることが多い。このために財政の国債依存度が高まり,将来の財政健全化に重い負担を残すことになりがちである。景気政策としての金融・財政政策にも限界がある。とくに現代では不況とインフレーションの同時発生(いわゆるスタグフレーション)がしばしばみられるが,この場合には単純な総需要政策としての財政・金融政策では有効に対処しえず,適切な政策の組み合わせが必要になる。

〔参考文献〕館龍一郎・小宮隆太郎『経済政策の理論』勁草書房

渡部経彦・筑井甚吉『経済政策』1972,岩波書店