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●景観 けいかん

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 景観はLandschftの訳語である。景観は日常語としても学術用語としても使用されるが,大陸ヨーロッパでは地理学の主要概念として利用され,その内容も多岐にわたり,概念的な混乱もみられる。

【景観としてのランドシャフト】景観とは,本来地表面に刻まれた可視的現象であり,人間の手の加えられていない地形や植生など自然的景観要素のみによって構成されるものを自然景観と呼び,人力の加わったものを文化景観と呼ぶ。文化景観は一般に複雑な外観を示し,村落・道路・耕地や市街地などの景観要素が地表面を完全に占拠しているところもあり,自然景観のなかに人為のものがわずかに混在する場合もある。したがって,人類の発展の歴史のなかでは地表面における文化景観はしだいに増大している。人間の手の加わる以前の景観は原景観とも呼ばれる。

 景観は個々の景観要素の空間的統合とみられ,具体的かつ客観的に把握されやすいところから,景観の形態学が発達した。そこでは,観察と地図化によって景観の構成要素が分析され,形態の類型化が行われるとともに形態発生的アプローチが重視され,景観の起源や発展過程が論じられた。シュリューターは地表との因果関係にある事象のみを研究対象とする従来の関係科学的な地理学に対して可視的な景観を対象とし,研究対象を具体化したが,それは一方では研究領域を縮小することとなった。また,景観や形態は機能や活動とは異なり,景観分析によってその地域の実態が完全には理解されないとする批判も生じた。

 景観研究には形態のほかに営力や関連性も考察の対象となり,景観要素間の作用構造に注目され,景観生態学の研究が発達した。トロルは,地形・気候などの無機的な営力と人間の文化現象とのあいだを結ぶものとして生物的現象の変化過程にとくに注目した。

【地域としてのランドシャフト】ドイツ地理学では,ランドシャフトは単なる景観ではなく地域をさす術語として使用されてきた。シュミットヒューゼンらはこれを最高度に統合された地域を示す術語と考える。それは,地表上にある位置を占め,特定の外観を示すだけでなく,固有の内部的空間構造をもち,ランドシャフトの形成に作用する地理的要因間には相互作用があり,地理的要因の差異や変化によって空間的にも時問的にも変動するとみられるからである。このような総合的地域としてのランドシャフトは人間によって形成されるので,それは文化空間Kulturladschaftといい,Naturlandschaftは自然空間と呼んでこれとは区別される。

 ランドシャフトの最小の空間単位はランドシャフト細胞からなり,これらが集合して空間構造をもったランドシャフト個体を形成し,さらにいくつかの空間的なまとまりをへて最終的にはランドシャフト地帯を形成する。これは気候・植生さらには大地形など2〜3の地理的要因についてのみ類似する地域で,域内の地域差が大きく,いくつかの大陸にまたがって分布する。ハーバートソンの自然地域のように,そこでは気候が最も卓越する地理的要因と考えられる。

【ランドシャフト研究の問題点】ランドシャフトについては,研究者のあいだに見解の差異がある。それを個性的空間とみるか類型的空間とみるかによって見解の不統一があり,類型的空間のなかにも,水田景観とかカルスト景観のように単一の卓越現象によって把握するものと,多数の諸現象の結合のなかに求めようとする人とがある。またランドシャフトを空間像として実在するとみず,研究者の理解のための観念的なものと考える人もある。さらに,景観要素の空間的統合としてのランドシャフト研究には十分な分析用具も乏しく,科学的な研究対象として不適当であるとの批判もある。