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●黒いマリア くろいマリア

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 「黒い聖母」ともいわれる。ロマネスク美術に属し,10世紀後半から現れる木彫ないし木身の聖母(子)像のなかで,顔面や手が漆黒のものをさす。現存するものでは,オーヴェルニュ地方を中心とする中部フランス(マルサ・ロカマドゥールなど)や,東北スペインのカタルーニァ地方(モンセラット・ドレスなど)に多くみられる。すでに失われてしまったシャルトル大聖堂地下の「地の下の聖母」やル=ピュイの「黒い聖母」をも含めて,中世キリスト教民衆信仰の一つの中核として,数々の病気治癒や奇跡物語に色どられ,今日にいたるまで多数の巡礼の崇拝対象となってきた。黒色の由来については,ケルト・シリア・小アジアなどの異教地母神起源説,『ソロモンの雅歌』第1章第5節の〈われは黒けれどもなお美し〉にちなみ,黒檀を用いたり黒く塗ったとする故意彩色説,表面に張られた銀箔が酸化・剥落ないしは燈明の煙でいぶされたとする自然変色説がある。いずれにせよ,ふつうの聖母子像と比べ,神秘性・宗教性においてはるかに強烈な印象を与える効果をもっている。