●グリンメルスハウゼン
ヨーロッパ ドイツ連邦共和国 AD1621 ハプスブルク朝
1621ごろ〜76 ドイツ=バロックの代表的作家。若いころのことはよくわかっていない。幼時から三十年戦争の戦乱に巻きこまれ,軍隊とともにドイツ各地を放浪,のちにこの体験が彼の詩作の大きな活力源となった。戦後は南西ドイツの小村レンヒェンに居住,一時はその村長もつとめたが,晩年の10年間は料理店を営みつつ創作に従事,全部で約20編の作品を残した。代表作は,ドイツ=バロック小説群のなかで唯一今日まで生き残って愛読されている『阿呆物語』(1669)である。無垢な少年が戦乱の世に投げ出され,多彩な経験を重ね,やがて世の無常を悟り,隠者となって神との和合のなかに魂の平安をみいだす物語である。核心をなすキリスト教的思想のまわりに,三十年戦争に取材した豊かなエピソードが巻きつけられて,当時のドイツの現実を通して宗教的教義の真実が示され,しかもすべてが民衆的な語り口で述べられる。この作品がドイツ近代小説の始祖とみなされるのは,その現実性と庶民性によるのである。ほかに注目すべき作品としては,ブレヒトの『胆っ玉おっかあ』の典範となった『放浪女クーラーシェ』(1670)があげられる。