●グラス
ヨーロッパ ドイツ連邦共和国 AD1927 ワイマール共和国
1927〜 現代ドイツの作家。現ポーランド領ダンチヒに生まれ,故郷の町の小市民的生活感情と北方風土独特の重苦しい雰囲気とに包まれた,きわめて自伝的要素の強い,幾多の傑作を書きつづっている。映画にもなった『ブリキの太鼓』(1959)はとくに有名であるが,これは世の中に抵抗して自ら階段から転落することによって成長を止め,子供の目で大人の世界,すなわち社会と時代を風刺的に眺める少年の物語で,ドイツ教養小説のパロディーといわれる。このように彼はすぐれた作話力の持主で,自己の生き抜いた生の基盤の上に壮大な虚構の世界を構築し,現実に象徴的意義を付与している。最近の大作『ひらめ』(1977)では,氷河時代から現在まで生き残った怪魚が人間の生活史を語るという奇想天外な構想で,人類の文化批判が行われる。その他に長編『犬の年』(1963)・中編『局部麻酔をかけられて』(1969)・『かたつむりの日記より』(1972)・短編『猫と鼠』(1961)などがあり,彼の卓越した独創力によってドイツ小説は新たな活力を得たといえる。