●銀行 ぎんこう
AD 【銀行の語源】Bankは、中世イタリアで、両替商が都市の広場に両替台(banco)をもち出して、その上で預金と貸付を行ったことに語源を発するといわれている。銀行という訳語は1869年(明治2)ごろから使用されているが、これは香港で刊行された『英華辞典』からとられたのであろうといわれている。銀行という語がわが国で一般的に普及したのは、1872年(明治5)に「国立銀行条例」が制定されて以後のことである。
【日本における銀行の歴史】1872年(明治5)「国立銀行条例」が公布され、銀行券発行の特権をもつ国立銀行が設立された。国立銀行の新設は1879年(明治12)に禁止されたが、それまでに設立された国立銀行は153行に達した。これらの国立銀行とは別に、1876年(明治9)以降、銀行券発行の特権をもたない普通銀行も設立され、その数はしだいに増加した。1882年(明治15)「日本銀行条例」が公布され、銀行券発行の独占権をもった「日本銀行」が設立されるにおよんで、それまでの国立銀行はつぎつぎに普通銀行へ転換し、1899年(明治32)には国立銀行は消滅し、その多くは普通銀行となった。1890年(明治23)に「銀行条例」が制定され、これらの普通銀行も従来の普通銀行とともにこの条例の下に統制されることになった。1887年(明治20)に「横浜正金銀行条例」、1896年(明治29)に「日本勧業銀行法」と「農工銀行法」、1899年(明治32)に「北海道拓殖銀行法」、1900年(明治33)に「日本興業銀行法」等が公布され、これらによってそれぞれ特殊銀行が設立された。このほかに1890年(明治23)の「貯蓄銀行条例」にもとづいて庶民金融機関としての貯蓄銀行も多く設立された。普通銀行は、1901年(明治34)に1,867行の多きに達したが、その後合同・集中が行われ、1927年(昭和2)制定の「銀行法」以後、この傾向はさらに強められ、1931年(昭和6)末に683行、1936年(昭和11)末418行、1941年(昭和16)末186行と激減した。1936年末、政府は一県一行主義の行政指導を行い、地方銀行の合同をすすめた。さらに1942年(昭和17)の「金融事業整備令」によって銀行は減らされ、1945年(昭和20)には61行となった。
戦後、1946年(昭和21)「金融緊急措置法」「日本銀行券預入令」等の銀行救済策がとられ、銀行の再建が行われ、銀行は資金の主要な供給源として中心的役割を果たすようになった。一県一行主義は1949年(昭和24)に修正され、新設・合併が行われ、さらに特殊銀行も改組され、現在は、都市銀行13行、地方銀行64行となっている(1984年11月現在)。そのほかに各種の専門金融機関・信託銀行・相互銀行・信用組合・金庫および公庫などがある。
【銀行の機能】銀行は資金の需要と供給の仲介を主要業務とする金融機関である。社会には、一方において、資金を他人に貸そうとするもの、他方において必要な資金を借りようとするものがある。資金がその供給者から需要者へ貸借という形式で移動する現象を金融(finance)という。
資金の移動は、借り手が貸し手に対して手形・借用証書および債務など将来の返却を約束する証書を差入れて、資金の融通を受けるという形式で行われる。このような取引を金融取引という。借り手が貸し手に対して支払う報酬が利子または金利である。資金の需要・供給者は、家計・企業・公共部門(政府・公社・公団・地方公共団体)および海外部門に分けられる。資金の最大の供給者は家計である家計の貯蓄は、一部は住宅建設などの実物資産の所有に向けられるが、大部分は金融資産として保有される。
わが国の個人貯蓄率(貯蓄を可処分所得で割った比率)は、最近では20%前後で、国際的にみて最も高い。個人金融資産では、定期性預金(郵便貯金を含む)が最も多く、ついで有価証券(債券と株式)・要求払預金・保険・現金および信託の順序となっている。資金の需要者は主として企業と公共部門であるが、家計もまた需要者である。企業は不足資金を借入金や株式の発行によって調達する。電力・鉄鋼など大きな企業は事業債の発行が認められている。国際化がすすむにつれて、海外部門から対外債務の形で資金を調達する企業もふえた。公共部門は、かつては資金余剰部門であったが、1975年(昭和50)ごろからは資金不足部門になった。政府は財政収入のうち租税で足りない部分を国債発行で調達するとともに、郵便貯金などで集めた資金を公社・公団や民間に投融資している。公社・公団・地方公共団体は資金不足分を公社団債や地方債の発行、財政投融資および金融機関からの借入れなどによって調達する。一般家計は住宅建設そのほかの目的で金融機関から資金を借入れる。
金融機関を中心にして金融取引のために成立する市場を金融市場という。金融機関は預金そのほかの形で自己の証券を資金供給者に売り、それによって得た資金で貸出や有価証券投資を行って、資金需要者の証券を買うのである。これらの証券は貨幣とともに金融資産と呼ばれ、これらのうち換金が容易なものは、流動性が高いので、ニアー=マネーと呼ばれている。金融市場は、そこで取引される証券の満期限が1年以内か1年以上かによって、貨幣市場(短期金融市場)と資本市場(長期金融市場)とに分けられる。前者には預金市場・短期貸付市場・割引市場およびコール市場などがある。割引市場は、手形がその額面金額から満期までの利子を差引いた価格で売買される市場である。コール市場は、金融機関がほかの金融機関に短期の資金不足をカバーするために無条件か、あるいは2日ないし7日という短い満期限で証券を売買して貸借を行う市場である。長期金融市場には、長期貸付市場および証券市場などがある。金融市場では金利が成立する。そのおもなものに、公定歩合・預金金利・貸出金利・コール=手形売買レート・CD(譲渡性預金 Certificate of Deposit)市場・公社債利回りなどがある。
公定歩合は「日本銀行法」の規定に従って、日本銀行政策委員会によって決定・変更される。それは政策的に決められるものである。公定歩合が低く定められるならば、日本銀行からの借入れが容易となり、資金供給が増加するから、市場金利も一般的に低下する。反対に公定歩合が高められると、日本銀行からの借入れが困難となり、資金供給が減少して、市場金利は一般的に上昇する。中央銀行が公定歩合を上下させて、通貨供給量を変化させ、景気・雇用・物価などを望ましい方向に導こうとするのが金利政策である。
コール=レートは金融の繁閑によって大幅に変動する。金融引締期には、ほかの金利を上回ることもある。銀行がとくに信用のある企業などに貸出す場合の金利はプライムレート(最優遇賃出金利)と呼ばれる。わが国の短期プライムレートは5.5%、長期プライムレートは7.9%となっている(1984年4月現在)。貸出金利が預金金利より高いのは、危険負担や手数料等があるためである。
【銀行の種類】銀行は狭義では銀行という名称が与えられているものに限られるが、広義では、資金の需要と供給を主たる業務とする金融機関をいう。ここでは広義に解して、銀行を大きく分類すると、中央銀行・民間金融機関および政府金融機関の三つに分けられる。
中央銀行は、わが国では日本銀行がそれである。日本銀行は1882年(明治15)6月27日に制定された「日本銀行条例」にもとづいて設立され、1942年(昭和17)に抜本的改革が行われた。日本銀行は営利を行うものでなく、金融統制機関としての職能を遂行するものであって、その取引先は政府および金融機関に限られており、“銀行の銀行”といわれている。日本銀行業務のうち最も重要なものは、日本銀行券の発行である。日本銀行は貸出・手形割引および国債引受などの形式で日本銀行券を発行する。日本銀行券の発行数量は国民経済の運営に重大な影響を与えるので、その基本的連営は、日本銀行に設けられた政策委員会によって、国民経済全体の立場から決定される。
民間金融機関は金融機関の大部分を占めており、その数約7,600社、資金量で全体の76%を占めている。民間金融機関のうち、都市銀行と地方銀行を普通銀行といい、それ以外の銀行および銀行以外の金融機関を専門金融機関という。都市銀行とは、本拠地が大都市にあって、その営業地域が全国的に広がっている銀行であり、地方銀行とは、地方都市に本拠地を置き、その地域に密着した業務を行っている銀行をいう。普通銀行は「銀行法」1928年(昭和3)1月1日施行、その後数次にわたって改正されることによって設立されている銀行で、その業務内容から、“商業銀行”とも呼ばれている。在日外国銀行も「銀行法」の通用を受ける普通銀行である。
専門金融機関には、外国為替銀行・長期金融機関・中小企業金融機関・農林漁業金融機関がある。
外国為替銀行は1954年(昭和29)制定の「外国為替銀行法」によって設立された銀行をいい、現在のところ東京銀行一行だけである。これは以前の横浜正金銀行が発展したものであって、外国為替取引や貿易金融を主要な業務とするが、普通銀行の業務もあわせ営むので、都市銀行の中に分類されている。
長期金融機関は長期貸出を主要業務とする。長期信用銀行は1952年(昭利27)制定の「長期信用銀行法」によって設立されたもので、銀行債券または金融債券を発行して、長期資金を吸収することを許された銀行である。資金運用も設備資金または長期運転資金の融資を主とする。現在、日本興業銀行・日本長期信用銀行および日本債券信用銀行の3行がある。かつては日本勧業銀行と北海道拓殖銀行も債券発行が許されていたが、同法施行に伴い新債券の発行は認められず、これらは普通銀行となった。なお今日、日本勧業銀行は第一銀行と合併し、第一勧業銀行となっている。信託銀行も長期金融機関に含められる。これは「銀行法」にもとづく銀行であるが、1943年(昭和18)の「兼営法」によって信託業務を主要業務として兼営する銀行である。
中小企業金融機関は中小企業に対する資金供給を専門とする。これには相互銀行・全国信用金庫連合会・信用金庫・全国信用協同組合連合会・信用組合および商工組合中央金庫がある。
相互銀行は1951年(昭和26)施行の「相互銀行法」にもとづいて設立されたもので、無尽会社が転換した。無尽は日本に古くから行われていた小口金融方式であるが、これを合理化して、銀行的性格、とくに貯蓄銀行的性格をもたせ、零細貯蓄を吸収させ、貸出を中小企業に制限しようとするものである。
信用金庫(信金)と信用組合(信組)はともに信用組合であったが、1950年(昭和25)の「信用金庫法」の制定に伴って、規模が大きく、かつ一般金融機関的性格の強いものは信金として発足した。信金の上部機関に全国信用金庫連合会があり、信組の上部機関に全国信用協同組合連合会が設置されている。
商工組合中央金庫は、1936年(昭和11)に施行され、その後たびたび改正された「商工組合中央金庫法」によって中小商工業者の組織する協同組合およびそれらの組合員に対する金融を円滑にするために設立された半官半民的機関であって、政府の中小金融対策のための重要な機関の一つともなっている。
農林漁業金融機関は農林漁業への金融を専門的に行うもので、相互扶助にもとづく組合組織となっている。農業協同組合(農協)は信用事業のほかに、購買・販売・共済などの事業も行っている。農協の上部機関として、信用農業協同組合連合会(信農連)が都道府県に1機関ずつ設立されており、その上に農林中央金庫(農中)がある。農中の前身は1923年(大正12)の法律で設立された産業組合中央金庫であるが、1943年(昭和18)5月に農林中央金庫になった。出資者は政府のほかに、農協・森林組合・漁業組合などである。このほか共済農業協同組合連合会、その上に全国共済農業協同組合連合会がある。
専門金融機関には、このほか労働金庫も加えられる。これは労働組合や消費生活協同組合などが行う福利共済活動を金融面から支援しようとするもので、各都道府県に1金庫ずつ設立されており、その上部に全国労働金庫連合会がある。
生命保険会社や損害保険会社は、本業は保険であって、銀行ではないが、保険料を積み立て、運用しているために、金融機関としての一面をもっている。とくに、生命保険会社は資金運用期間が長く、長期金融機関として機能している。
つぎに政府金融機関であるが、これには日本開発銀行と日本輸出入銀行の2銀行、各種の公庫および郵便局があって、民間金融機関を補完している。日本輸出入銀行は1950年(昭和25)施行の「日本輸出入銀行法」によって設立された政府金融機関である。最初は日本輸出銀行であったが、1952年(昭和27)の法律改正によって日本輸出入銀行になった。一般金融機関の輸出入金融を補って、貿易を増大させることを目的としている。とくにプラント輸出のための長期資金や原材料輸入のための資金を供給している。
日本開発銀行は、1951年(昭和26)施行の「日本開発銀行法」によって設立された政府金融機関であって、1959年(昭和24)3月をもって貸出を停止することになった復興金融金庫の融資を引き継ぎ、不安定な戦後において収益性が不確実な企業に対してその設備資金を供給することを目的とするものである。
公庫とは国民金融公庫・住宅金融公庫・中小企業金融公庫・医療金融公庫・農林漁業金融公庫など10公庫がある。いずれも庶民を対象とする政府金融機関で、国民生活や産業上重要でありながら、民間金融機関で取り扱えないような貸付を行うためのものである。たとえば国民金融公庫は1949年(昭和24)施行の「国民金融公庫法」に基づいて、全額政府出資で設立され、小口の資金を人的保証で貸付けるとともに、生活困窮者に低利で貸付けを行う。住宅金融公庫は1950年(昭和25)の「住宅金融公庫法」によって、戦後の住宅難に対する措置として設立された。中小企業金融公庫は、1953年(昭和28)の「中小企業金融公庫法」にもとづいて、中小企業に対する設備資金と長期運転資金の賃付をおもな目的として設立された。国民金融公庫が対象とする零細企業よりも規模の大きい中小企業に融資を行うものである。
これらの各種公庫に対して原資を主として供給しているのが、資金運用部および簡易生命保険である。資金運用部資金のほぼ60%は郵便貯金で、残りは厚生年金・国民年金の各預託金で賄われる。郵便貯金は全国2万2,000の郵便局から集められる。郵便局はもっぱら資金を吸収するだけで、その運用はすべて大蔵省資金運用部に委ねられている。
【民間金融機関の業務】民間金融機関の資金調達ルートのおもなものは、預貯金・CD(譲渡性預金)・金融債・信託および掛金である。
預金には、当座預金・定期性預金・通知預金・別段預金などがある。これらのうち定期性預金以外のものは要求払預金であって、預金通貨と呼ばれ、定期性預金は準通貨と呼ばれる。
CDは1979年(昭和54)に大口金融の吸収を目的として創設されたもので、譲渡性があり、自由金利であることを特徴とする。その最小預金単位は当初5億円であったが、その後3億円になり、1985年(昭和60)1月からは1億円になった。
小切手の流通を容易にする制度として、預金振替制度と手形交換制度とがある。前者は銀行に当座勘定を有する者のあいだでの貸借の決済を銀行の帳簿上の振替によって行うものである。後者は多数の銀行が相互の支払決済を簡単にするために、組合を組織し、他銀行にあてられた小切手や手形を受け取った各銀行がこれらをまとめて一定の場所、すなわち手形交換所にもち寄り、相互に交換を行い、その交換差額を現金か、あるいは組合の中心銀行に有する各銀行の当座預金の振替によって決済する制度である。
金融債の発行は長期信用銀行・外国為替銀行・農林中央金庫および商工組合中央金庫に認められている。それには半年に1回の割合で利息を支払う利付債券(期間5年)と割引形式の割引債券(期間1年)とがある。
信託銀行の資金調達は金銭の信託であり、その主力は貸付信託である。相互銀行は掛金によって、資金を集めることができる。
民間金融機関はこのほか補完的手段として、日銀借入れおよびコール=マネーなどによって資金を調達する。つぎに民間金融機関の資金運用であるが、これには貸出・手形割引および有価証券投資がある。賃出には、証書貸付・手形貸付・当座貸越およびコール=ローンなどがある。手形割引は、銀行が手形をその支払満期日前にその満期までの利子を手形金額から差し引いた価格で買い入れることをいう。手形には約束手形と為替手形とがある。前者は商品の買い手(債務者)が売り手(債権者)に対して振り出すものであり、後者は債権者が債務者に対して一定金額を第3者またはその指図人に対して支払うべきことを命ずる証書である。これらの手形は振出後一定の期間後に支払うべきことが定められているから、支払満期日前にその金額を受取ろうとする場合、それを銀行に持参して割引いてもらうのである。これらの手形は商取引にもとづいて成立した商業手形であるから、その割引には無担保のものが多いが、荷為替手形のように、運送中の貸物を担保とするものもある。銀行の有価証券投資は、都市銀行や長期信用銀行では国債の割合が最も多く、つぎが株式である。地方銀行では国債と並んで地方債の割合が高い。
〔参考文献〕熊谷尚夫他編『経済学大辞典』1980、東洋経済新報社
小泉明他編『現代経済学辞典』1979、青林書房新社
山崎覚次郎監修『金融大辞典』1934、日本評論社
呉文二『金融読本』1976、東洋経済新報社
川口慎二編『金融論入門』1979、春秋社
水野正一他編『金融の経済学』1976、有斐閣
山田良治他『金融入門』1977、有斐閣
原田幸松他『金融界』1982、教育社
山下邦男『銀行論』1972、東京大学出版会
川口弘『金融論』1977、筑摩書房
館龍一郎他『金融』1977、岩波書店
