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●記録文学 きろくぶんがく

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 ルポルタージュ・ドキュメンタリー・ノンフィクションまたはロシア語のオーチェルク(邦訳で報告文学・通信文学)など,ニュアンスは少しずつ異なるが,いずれも含まれる。事実をありのまま,または一度の視点に立って観察し記述する文学をいい,真実性もさることながら,文学性が要求される。歴史的・社会的事件や人物に関するものから個人的なものまで範囲は広く,現地報告・社会探訪・旅行記・探検記・自伝・伝記・日記・書簡・従軍記・見聞記・生活記録・回想録・戦記・歴史など。

 世界的名作にはジョン=リードの『世界をゆるがせた十日間』がある。アメリカの一新聞記者の目から、“ロシア十月革命の際のソヴィエト政権の成立”の過程がつぶさに描かれ,記録文学史上,屈指の名作となった。その後も,E.スノー『中国の赤い星』,A.スメドレー『戦う中国』など,アメリカ人記者による傑作が次々と世に出た。リードとともに記録文学史上欠かせない人に,プラハ生まれのE.キッシュがあり,ルポルタージュ集『韋駄天(いだてん)記者』の題名そのままに世界各地に足跡をのこし,優れた記録文学を生んだ。その他の代表作にトロツキーの『自伝』,中国革命を扱ったシーモノフの『たたかう中国』,劉白羽『環行東北』,ジョージ=オーウェル『カタロニア讃歌』,レマルク『西部戦線異状なし』など。日本においても,紀貫之土佐日記』,藤原道綱母『蜻蛉日記』より始まって,江戸期の『折たく柴の記』(新井白石)・『蘭学事始』(杉田玄白)など,数々の古典名作があるが,20世紀に入ってからも,女工の生活を記録した酒井和喜蔵『女工哀史』,戦没学生の手記『きけわだつみの声』,原爆体験を描いた大田洋子『屍の街』,広津和郎『松川裁判』,水俣病を描いた石牟礼道子『苦海浄土』などの傑作が次々に生まれている。