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●ギルガメシュ

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 バビロニアの『ギルガメシュ叙事詩』の主人公。後代のシュメール語で記された王朝表によれば,ギルガメシュは悪霊リラを父にもち,クラブ市の主として126年間支配したとある。ウルク第1王朝にあたる。しかし前24〜500年ごろのファラ出土の神名表ではギルガメシュ神として記録され,その実在性はまだ証明されていない。叙事詩の写本は古代オリエント全域に流布していたらしく,フツリ語・ヒッタイト語その他の写本の断片が多くの遺跡で発見されている。しかし,最も完全な写本はアッシュール・バニパル王のニネヴェ文書館から出土したアッカド語の12巻本で,『旧約聖書』のノアの洪水に酷似する有名な洪水伝説もそのなかに含まれている。この写本は前7世紀のアッシリア時代のものであるが,前18〜前17世紀にさかのぼるバビロニア時代の作品,およびこのバビロニア版・アッシリア版の叙事詩のエピソードに照応するシュメール語の作品が多数発見されている。英雄ギルガメシュを主人公とするシュメール語の物語は,内容に従って『ギルガメシュとキシュ市のアッガ』『ギルガメシュと怪獣フワワ』『ギルガメシュとエンキドゥと冥界』『ギルガメシュと天牛』『ギルガメシュとかしの木』『ギルガメシュの死』と呼ばれている。これらの物語とバビロニア版『ギルガメシュ叙事詩』とのあいだには明白な類似点が多く認められるが,『ギルガメシュ叙事詩』は全体としてシュメール原形によるものではなく,シュメールの物語からエピソードを借用して,友情と死を主要テーマに据え,ギルガメシュを主人公とする叙事詩にまとめあげられたものと考えられる。叙事詩の概略は次のとおりである。ウルクの王ギルガメシュは人並み外れた力の持ち主でウルクの男たちを悩ませていた。男たちの嘆願を聞いた神々は創造神アルルを呼びギルガメシュの力に匹敵する相手を創ることを命じる。アルル天神のイメージを心に描き,手を洗い,粘土をとってそれを砂漠に投げるとエンキドゥが生まれる。エンキドゥは並み外れた力をもっていたが,自然のままの姿で歩き回り,髪は女性のごとく長く,草を食べ,砂漠をカモシカのごとく徘徊した。動物を友とし,人間の仕掛けたわなをこわして動物を助ける。このため猟師たちはウルクに出かけギルガメシュにエンキドゥを動物から離してくれるように訴える。この訴えを聞いたギルガメシュはエンキドゥを誘惑させるために一人の売春婦を送る。誘惑されたエンキドゥは彼女と1週間を楽しく過ごし,動物たちのところへ戻るが,動物たちは恐れて逃げる。エンキドゥは懸命に彼らを追いかけるが,かつての力とスピードは彼になく追いつくことができなかった。人間との接触により,彼は思慮を得たと作者はいう。売春婦のすすめで二人はウルクにむかう。ウルクではちょうどギルガメシュの結婚式が行われようとしていた。花嫁の家に入ろうとするギルガメシュをエンキドゥがじゃまをしなかに入れさせない。二人は組討ちを始め,エンキドゥが勝つが,彼は自分の力を誇らず,逆にギルガメシュを称える。この雅量がギルガメシュの心をとらえ,二人は永遠の友情で結ばれる。かくてすべての問題は解決されたかにみえた。しかし新しい生活のなかでエンキドゥの力は目にみえて衰えていく。そこで二人は西方の杉の森に住むという怪獣フワワを退治することになる。二人に打ち負かされたフワワはギルガメシュに命乞いをするが,エンキドゥは信用せず,その首をはねる。凱旋する雄々しいギルガメシュに女神イシュタルが惚れ求婚するが,侮辱され断られる。彼を罰するために放たれた天牛をも二人は退治し力と名声の頂点に立つ。しかしフワワを退治したことがエンリル神の怒りに触れ,エンキドゥは死を与えられる。親友の死で生の無常を知ったギルガメシュは,シュルッパクに住む不死の王ウタナピシュティムに永遠の生命の秘訣を聞きに行くが,そのとき王に洪水物語とともに長寿の霊草の所在を教えられる。しかし,やっと手に入れた霊草は帰途泉で入浴中に蛇にさらわれ,むなしくウルクに帰る。蛇はこのため脱皮し若返ることができるという。