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●ギリシア神話 ギリシアしんわ

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 古代ギリシア民族の生み出した神話。全世界の神話のうちで最も豊富な内容と美しさを有する。天地の生成,人格的な男女の神々の誕生や活躍,神々の血統を引く半神(英雄)たちの冒険や戦闘など,多様な内容を含むが,純粋な本来の神話の要素と英雄伝説とに大別することができる。

【神々の物語】これは自然現象や社会事象を,科学以前の素朴な思考によって説明しようとするもの。天(ウラノス)そのもの,大地(ガイア)そのものが,それぞれ男女の神とみなされ,両者の結婚から万物が生成していくことになったという。世界の最初の支配者はウラノスであったが,その子のクロノスがこれを征服して2代目の支配者となる。さらに,その末子のゼウスが父を倒して,3代目の最終的な支配者になる。ゼウスはホメロスの詩では〈神々および人間の父〉と称せられ,姉にあたるヘラを正妻とするが,別の女神たちや人間の女性にも多くの子供を生ませたことになっている。そしてオリンポス山頂に宮殿を構え,自らの大家族の神々を集めて優雅な宮廷生活を楽しんでいた。これが「オリンポスの神々」であり,人間のように喜怒哀楽するが,不老不死という点で人間と絶対に異なっていた。ゼウスは壮年,アポロンは青年,アルテミスは若い処女というように,それぞれに相応な年齢に永久にとどまる。このように神々は高踏的・美的な存在であったが,他面では,あくまでも人々の生活や生業と密着した存在でもあった。たとえば,ヘラは結婚を司り,アポロンは神託や音楽の神,アルテミスは狩猟を司り,デメテルは穀物を恵み,ヘルメスは牧畜を司る。さらに河川・樹木・草花・泉など,身近な自然物も,それぞれ男女の(比較的下級の)神とみられ,また“勝利”とか“平和”とかの抽象的な概念までが女神として扱われた。地下の冥界には,ハデスなど,それに相応なる神々が住んでいるものとされ,その支配力も重大であった。

英雄伝説】英雄(ヘーロース)は半神(ヘーミテオス)とも呼ばれ,その多くは神々と人間との混血児やその子孫であり,ゼウスその他の神々に導かれつつ,華々しく難事業や戦争を行った。彼らは原則として死すべき人間であるが,美しく立派な肉体に恵まれ,死後は英霊として祭られることもあった。彼らが活躍する舞台は,概して青銅器時代のギリシアであり,実在の人物や事件が物語の核心になっている可能性もある。個人的な伝説としては,ヘラクレステセウスの12の難業の物語がある。集団的な伝説としては,イアソンが指揮するアルゴナウタイが,黒海東端へ黄金の毛の羊の皮を取りにいく冒険物語,アガメムノン指揮下のギリシア軍が美女ヘレネを奪回するためにトロイアへ遠征した物語などがある。さらにテーバイのライオス家・ミケーネのアトレウス家のように,青銅器時代に栄えた王家にまつわる悲惨な伝説もあり,前者のオイディプス王やアンティゴネ,後者のアガメムノンクリュタイメストラやエレクトラなどの人物は,古典期アテナイの悲劇の登場人物として,複雑かつ重厚な人物に仕上げられた。

【後世への伝達】ほかの国々では神話は文明の発達と同時に衰滅したが,ギリシアではむしろ,文明と歩調を合わせて発展し洗練されていった。単に詩文に取り上げられたばかりでなく,美術でも表現されたため,神話は人々の精神や文化に大きな影響を与えた。そしてローマ人にも受容されてオウィディウスの『転身物語』や当時の彫像などにみられるように,ますます優雅なものとなった。キリスト教の勝利により,これらは邪教視されるが,イタリアのルネサンス期に再評価され,それ以来ヨーロッパの文学や美術の題材とされた。とりわけバロック美術の巨匠ルーベンスの絵画,ドイツの文豪ゲーテの作品などで,ギリシア神話は新しい生命を吹き込まれた。