●教育心理学 きょういくしんりがく
AD 【意義】教育課程に関連した諸事象を発達心理学的・学習心理学的に研究し、教育効果を高めるための技法を開発し、教育目標との関連において得られた心理学的事実にもとづいて、その知見を体系化し、教育活動全般の合理化・効率化をはかる心理学の一分野。ドイツの哲学者ヘルバルトはペスタロッチの影響を強く受けて、〈教育の目的を倫理学に、教育の方法を心理学に求める〉ことにより、一般教育学を体系化した(1806)。方法論的には、心理学の原理そのほかの知見を教育に応用しようとする広義の応用心理学的立場の研究ならびにシステム化を志向するものと、教育心理学自体が教育という現実のなかで独自の理論と方法を構成し、その試行と活用にもとづいて自己評価を重ね発展させようとする立場とがある。C.E.スキナーは〈教育心理学は、心理学全分野の事実や原理から生活や社会活動について一般的意義を有するもの、ならびに学習や教授にとって特殊的意義を有するものを選択するものである〉と古くから歴史的に考えられてきた立場を代表する立場で教育心理学を体系化している(1945)。これに対し、A.I.ゲーツは〈教育心理学は一般心理学の単なる応用以上のものであり独自の内容をもつ。したがって教育に応用されるものの妥当性の実験的検証が必要で…(中略)…理論と実践との相互の関連性を問題としなければならない〉と主張している(1948)。
【内容】ソーンダイクは体系的教育心理学創設の先駆者で、『教育心理学』3巻(1913〜1914)はアメリカの戦前のテキストの基準的役割を果たした。その内容は、個人差・言語発達・学習原理・教育測定などであった。わが国では戦後の新教育の推進とともにアメリカ進歩主義教育と心理学の影響を受け、教員養成制度の確立とともに、文部省編『教育心理』がいち早く刊行され、教育心理学の定着をみた。アメリカ流の教育心理学の内容は“発達”“学習”“適応”“測定・評価”の四本柱を中心とし、近代集団学校教育を対象とした応用教育心理学の色彩が強いものである。最近では上記の四本柱を中心とし、教科カリキュラム、学級集団、教師・生徒の人間関係、教育相談(カウンセリングとガイダンス)および障害児の心理と教育など、きわめて広範囲にわたっている。欧州とくにイギリスなどでは若干趣を異にしている。イギリスでは教育心理学者という名称は、遅進児そのほかの問題児の教育治療やガイダンス、進路指導の助言など学校心理学者をさす場合が多い。他方で心理学的素養をもち、教育問題を専門に研究するアカデミックな学者も教育心理学者である。学習理論の現場への適用は、教育心理学の主要課題となっているが、そのなかで学習効果に関連した重要な諸変数には、“動機づけ”“成熟と個人の成長パターン”“能力における個人差”“学校における心理的指導とサービス”“教師−生徒関係”などが総合的有機的に取り上げられている。
【日本の教育心理学】とくに第二次世界大戦後、新しい教育制度と連動した教員養成制度の確立とともに、教育心理学は教職科目として必修すべきものの一つとなり、義務教育を対象とした教科書として発展してきた。概して応用心理学的色彩が強く、教師となるべき者に心理学的視点と素養を付与するための発達心理学的法則と知見、学習の理論と法則、教育的統計と評価技術および人格適応の理論と生活指導法などの一般論に終始するものが多い。教授・学習に関する実験教育も学級集団指導法を中心に試みられているが、最近は生徒指導・教育相談・カウンセリングの研究が学習指導とともに重視されるようになった。さらに教育を学校教育のみに限定しないで、家庭教育や社会教育活動の面についても親子関係・しつけの問題・青少年健全育成など、人格形成についての総合的視野も教育心理学の課題となりつつある。
〔参考文献〕三好稔『教育心理学(改訂版)』1973、金子書房
小林利宣編著『教育心理学−中学・高校教育課程』1981、朝倉書店